野菜や果物の腐敗を先延ばしにする仕組み
冷蔵庫の低温環境は、細菌の繁殖を抑えるだけでなく、果物や野菜の腐敗を遅らせる効果もあります。
バナナを長く保存していると、全体に黒い斑点が浮かんできますが、これはバナナが熟しすぎているためです。
バナナをはじめとする果物や野菜は、無数の植物細胞が集まってできており、その一つ一つは丈夫な細胞壁に囲まれています。
細胞壁は多糖類から成っており、酵素によって分解されることで次第に野菜や果物が柔らかくなります。
多糖類が分解されると、実はどんどん軟らかくなり、最終的には細胞がほぼ完全に分解されて食べられなくなります。
こうした腐敗の原因となる一般的な酵素は、リパーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼなどです。
しかし温度が低いと、酵素の働きやその他の生物学的プロセスが低下し、熟成が進まなくなります。
果物や野菜を冷蔵庫に入れておくことで、食品が腐り始めるまでの時間を稼ぐことができるのです。
すべての食品は有機物ですから、いずれは腐る運命にありますが、冷蔵庫できちんと保存しておけば、最後の審判を先延ばしにすることは可能でしょう。