7種類の基本形を特定!
爬虫両棲類学者で、本研究主任のジュリアン・ファイボビッチ(Julián Faivovich)氏はカエルの目について次のように話します。
「目は、アマガエルとガマガエルを通じて、最も大きな特徴の一つです。
カエルの持つ瞳孔の形や、それを取り巻く虹彩の色の多様性に、私たちは昔から驚かされてきました。
一方で、その多様性の解剖学的な根拠については、ほとんど何も分かっていませんでした」
そこで同氏と研究チームは、既知のカエルの44%に相当する3261種の画像を集め、瞳孔の形を一覧としてカタログ化。
その結果、カエルの瞳孔には、垂直スリット・水平スリット・ひし形・円形・トライアングル・扇形・逆さ扇(下図を参照)の7つの主要な形に分類できることが分かりました。
また、最も一般的な形状は水平スリットで、調査対象とした種の78%を占めています。
こうした瞳孔の違いは、カエルの進化上で、どのように生じたのでしょうか?
チームは、カエルの進化系統樹に瞳孔の形をマッピングし、多様化のプロセスを推測。
その結果、他の脊椎動物ではあまり見られない水平スリットが、多様な瞳孔のほとんどを生み出したことが判明しました。
下の図は、カエルの既知種の進化系統樹で、科名につながる線の色は原始的な瞳孔の形を示し、科名の横の丸は、その中で現在見られる瞳孔の種類を示します。
これを見れば、水平スリットから多様な瞳孔が派生しているのは一目瞭然でしょう。
7つの主要な形は、少なく見積もっても、116回は進化したと考えられています。
同チームのナディア・セルビノ(Nadia Cervino)氏は「瞳孔の形は、光受容細胞や網膜に届く光の量に影響しますが、それらの形が視覚にどのような違いをもたらすかはよく分かっていない」と言います。
たとえば、カエルの水平スリットに似た瞳孔を持つ生物として、ヤギがいます。
ヤギの瞳孔は横長の長方形のようになっており、そのおかげで視野が広がり、天敵をすばやく察知するのに効果的です。
しかし、これと同じ機能がカエルにもあるかどうかは断定できません。
研究チームは今後、瞳孔の形の種類が少ないアマガエルを対象に、形状の多様化を促す要因について調査する予定です。
また、カエルがどのくらいの高さまで登るのか、水中で卵を産むかなどの生活様式や、虹彩の色など他の目の特徴についても、瞳孔の形に関係するかどうか解明していくとのこと。
それぞれの生息環境に適した瞳孔があるのか、それとも瞳孔の形に有利不利はないのか、今後の研究に注目です。