クマムシが歩行する理由の仮説
仮説の一つは、クマムシが、アリやハエのような昆虫と共通祖先を持ち、さらには似たような神経回路を備えているという説です。
実際、専門家の中には、クマムシを昆虫や甲殻類と同じ分類として扱う「汎節足動物」に含めるべきとの主張もあります。
もう一つの仮説は、クマムシと昆虫との間に祖先的な繋がりはないものの、進化的に有利だったため、独立して同じ歩行方法が獲得されたという説です。
これを「収束進化」と呼びます。
代表的な例は、同じ形に進化しているモグラとオケラの手です。
ニロディ氏は、どちらの可能性にも興味を示し次のように述べています。
「もし汎節足動物の歩行をすべて制御する祖先の神経システムがあるならば、私たちは生物学の新たな側面を学ぶことになるでしょう。
反対に、これが収束進化の結果であるなら、異なる環境において、この同じ運動戦略がいかに有効であるかを知ることになるでしょう」

今回の研究成果は、進化生物学や動物の運動能力の理解にとどまらず、急発展しているソフトロボットやマイクロボットの分野にも応用可能です。
小動物が困難な環境をいかに移動するようになったのかを知ることで、より効率的に狭い空間に入り込んだり、マイクロスケールで動作するロボットを開発できるかもしれません。
今後もクマムシに要注目です。