ペタシンは既存のミトコンドリア阻害薬に比べて1700倍強力
今回の研究により、日本原産のフキノトウの苦み成分であるペタシンに、優れた抗がん作用があることが示されました。
ペタシンは正常な細胞には害を与えないまま、異常な活動を続けるがん細胞内部において異常なエネルギー生産を行っているミトコンドリアを狙い撃ちにして、がん細胞の壊死(飢え死に)を起こしていたのです。
がん細胞のミトコンドリアを抗がん剤のターゲットとするという考えは古くからあり、実際にミトコンドリアの働きを抑制する糖尿病薬(メトホルミン)には肝がんの発生率を5分の1にするなど、優れた予防効果が知られていました。
しかし、メトホルミンなどの糖尿病薬が持つミトコンドリアの抑制効果は限定的であり、悪性度の高いがんに対して効果は限られていました。
また既存の強力なミトコンドリア活性の阻害薬は、がん細胞だけでなく正常な細胞のミトコンドリアの活動も邪魔してしまい、単なる毒物でした。
一方で、新たに発見されたペタシンは、メトホルミンなどに比べてミトコンドリアの活動を妨害する能力が1700倍以上にもなるものの、がん細胞のみに効くという点において非常に革新的です。
研究者たちは今後、ペタシンとミトコンドリアの関係をさらに分析することで、よりよい抗がん剤の開発につながると述べています。