認知能力に影響を与える腸内細菌を探す
近年になって、腸内細菌の働きが脳に大きな影響を及ぼすことが明らかになってきました。
例えば、腸内細菌がいないマウスは孤独になりがちな一方で、腸内細菌の多様性がある人は孤独を感じにくくなることが知られています。
また「O16」と呼ばれる腸内細菌は親マウスに育児放棄を誘発することも示されました。
さらに若いマウスの糞便移植によって老マウスの認知機能が改善するなど、腸内細菌は動物の精神活動を強く支配していることが示されています。
そこで今回、カリフォルニア大学の研究者たちは、マウスの頭が腸内細菌の入れ替えにより良くなるならば、逆に「バカ」にする腸内細菌もあるはずと考え調査をはじめます。
研究者たちはマウスを様々な環境下で飼育するとともに特定種類の栄養に偏った食事を提供し、バカになるかを調べました。
すると、「ケトン食」と低酸素の組み合わせがマウスの認知機能を大幅に下げると判明します。
ケトン食とは炭水化物が少なくタンパク質や脂質が多めの食事であり、様々な生活習慣病に対して効果があると言われています。
しかしケトン食を食べさせてたマウスを低酸素環境で飼育した結果、通常の酸素濃度に戻したにもかかわらず、マウスの認知能力は大きく低下したままでした。
具体的には、通常の生活をしていたマウスとくらべて、迷路の攻略において平均して30%ものエラー率の上昇があったとのこと。
そこで研究者たちは、早速マウスの腸内を詳しく調べました。
すると意外な細菌がみつかります。
その菌とは、肉に偏った食生活などで増加することが知られている、悪玉菌のビロフィラ菌でした。