ビロフィラ菌は免疫に影響を与えて海馬の働きを低下させていた
ビロフィラ菌がどのようにしてマウスの認知機能に影響を与えているのか?
謎を解明するため、研究者たちは腸内にビロフィラ菌を繁殖させたマウスの脳を調べました。
すると、ビロフィラ菌を繁殖させたマウスは、脳にある「海馬」と呼ばれる領域で、遺伝子の発現パターンが大きく変化しており、新たなニューロンを作る働きやニューロンどうしのシグナル伝達速度が低下していました。
海馬は脳において「記憶」や「学習」にかかわる重要な働きをしている領域です。
そのため海馬におけるシグナル伝達速度が低下した場合、記憶力や学習能力が低下することが知られています。
この発見により、ビロフィラ菌は海馬に悪影響を与えることで、マウスから記憶力や学習能力を奪い「バカ」にしていることが示唆されました。
問題は、ビロフィラ菌がいかにして海馬にダメージを与えるかです。
そこで研究者たちが目をつけたのは、免疫細胞でした。
近年の研究により、海馬は免疫の働きに大きく影響を受けることがわかってきたからです。
研究者たちが、バカになったマウスの免疫を詳しく調べた結果、予想通りTh1と呼ばれる免疫にかかわる細胞が大幅に増加していると判明。
また研究者たちがTh1細胞の発達を阻害したところ、マウスたちはビロフィラ菌の悪影響(バカになる)を受けなくなることが示されました。
この結果は、ビロフィラ菌が腸内で感染を広げることで免疫細胞のTh1を増加させ、Th1の増加が免疫に敏感な海馬の働きを鈍くしていたことを示します。