植物の老化が止まり、ゾンビと化す
ファイトプラズマは、宿主となる植物の成長を再プログラムする能力を持つ植物病原細菌です。
寄生した作物を枯らしたり、萎縮させるほか、叢生(側枝が異常に生える症状)や葉化(花びらが葉に置きかわる症状)、てんぐ巣(側芽がひと所に異常発生する症状)を発症させます。
1000種以上の植物に寄生し、自生植物や農作物に大打撃を与える悪名高い細菌です。
![てんぐ巣病にかかったヨーロッパダケカンバ](https://nazology.kusuguru.co.jp/wp-content/uploads/2021/09/500px-Betula_pubescens_Taphrina.jpeg)
側枝や側芽が異常発生する原因は、ファイトプラズマが植物の重要な成長調節因子を破壊し、老化スピードを大幅に遅らせていることにあるとされます。
これにより、異常な成長が促され、枝や芽が大量に生え続けるというわけです。
植物はいわば、望んでもいない若さを与えられ、実際の年齢とは無関係に成長し続け、一種の「ゾンビ」と化すのです。
しかし、ファイトプラズマの操作を分子レベルで理解しなければ、ゾンビ化は止められません。
そこで研究チームは、モデル植物のシロイヌナズナを用いた遺伝学的・生化学的実験により、ファイトプラズマの働きを詳細に調べました。