「悪魔の棲む地底」に初めて降り立った結果…
バラフートの井戸は、アラビア半島南端部、オマーンとの国境にほど近いイエメン東部の砂漠のど真ん中にあります。
井戸とは言うものの、人の手で作られたものではなく、自然にできた陥没穴です。
直径は約30メートル、深さは約112メートルに達します。
これまでにアマチュアの探検家が入ったことがありますが、地底にはたどり着いていません。
陥没穴が生じるパターンには、おもに、「崩壊型」と「沈下型」の2種類があります。
崩壊型は、地表下の岩盤の空洞が大きく膨張しすぎて上の屋根を支えられなくなり、岩盤とその上の堆積物が突然洞内に崩れ落ちることで形成されます。
一方の沈下型は、地表の堆積物が地下の小さな空洞にゆっくりと流れ込み、窪みや陥没穴が形成されることで生じます。
バラフートの井戸がどちらのパターンで、いつ出来たのかは不明ですが、専門家によると、数百万年前にはすでに存在した可能性が高いという。
地元民は、この陥没穴を説明するために、何百年も前から様々な伝承を語り継いできました。
最も有名な話は「地底には悪魔が住んでいて、地上の生命を不幸に陥れる」というもので、地元民は井戸に近づくことすら恐れていると言います。
今回の調査では、オマーン洞窟探検チーム(OCET)に所属する10名のメンバーが、バラフートの井戸に挑戦しました。
そのうちの8名を滑車システムで地底まで降ろし、2名は地上で待機し、地底と連絡を取ります。
地底までの深さは約112メートルあり、光の射し込む、広々とした空洞になっていました。
地底には、洞窟の天井から落ちた水滴に含まれる物質が積み重なってできるタケノコ状の「石筍(せきじゅん)」が散見されたとのこと。
また、洞窟真珠や生きたヘビ、空から落ちてきたと思われる鳥の死骸などが見られました。
陥没穴の中ほどの高さにある壁から水が流れ出ており、小さな滝を作っていたようです。
幸運と言うべきか、当然と言うべきか、地底に超自然的な悪魔の痕跡は見当たりませんでした。
研究チームのモハメド・キンディ氏は「洞窟内で採取された石や動物の死骸は、目下、分析中であり、近日中に公表する予定です」と話しています。
これで地元民の不安も解消されるかもしれません。