ガラスの強度を上げるには?
ガラスは非常に優れた素材です。
古代ローマの政治家ペトロニウスは自著「サテュリコン」の中で、「ガラスは壊れやすいがゆえに安価だが、そうでなければ金よりも好ましい」と評しています。
そんなガラスの強度を上げるために、「焼き戻し」や「貼り合わせ」といった技術が存在しますが、いずれもコストがかかる方法で、表面が傷つくと機能しなくなるという問題があります。
しかし、新たな研究はそんなガラスの問題を克服することに成功したようです。
今回の研究を発表したカナダ・マギル大学バイオエンジニアリング学部のアレン・エーリッヒャー(Allen Ehrlicher)准教授は次のように語ります。
「これまでのガラスには、高強度、強靭性、透明度の間にトレードオフの関係があり、いずれかを上げると、いずれかは下がってしまいました。
しかし、私たちの新素材ガラスは、通常のガラスの3倍の強度と5倍以上の耐破壊性があります」
この新素材を生み出すヒントは自然の中にありました。
エーリッヒャー准教授が目をつけたのは、アワビなどの貝殻の内側に形成される真珠層だといいます。
「自然は優れたデザインの達人です。
生物材料の構造と働きを理解すれば、新しい材料のインスピレーションが得られるだけでなく、ときにはその設計図を作成できます。
貝の真珠層は驚くべきことに、硬い素材の持つ剛性と柔らかい素材が持つ耐久性という両者の長所を同時に兼ね備えています」
研究チームは、この構造を利用して、新しいガラスを開発したのです。