木星の表面模様を代表する高気圧性の嵐の渦「大赤斑」
木星の表面模様を代表する高気圧性の嵐の渦「大赤斑」 / Credit:NASA, ESA, and A. Simon (Goddard Space Flight Center)
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木星の赤い斑点の渦はここ10年で加速していた (2/2)

2021.10.03 Sunday

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これは意味があるのか?

ボイジャー1号から撮影された大赤斑(1979年)
ボイジャー1号から撮影された大赤斑(1979年) / Credit:Wikipedia

今回の解析を主導したカリフォルニア大学バークレー校のマイケル・ウォン氏は、今回の発見について次のように語っています。

「この結果を最初に見たとき、私は『これは、なにか意味があるんだろうか?』と聞き返してしまいました。

しかし、これはまだ誰も気づいたことのない、長期間運用を継続してきたハッブル宇宙望遠鏡が、継続的に観察したからこそできた発見だと考えました」

地球の嵐の風速が詳細にデータを出せるのは、人工衛星や飛行機がリアルタイムに嵐を追いかけ綿密な観測を行っているからです。

木星には、そんな観測を行うものは何もありません。

ハッブルによって測定された大赤斑の風速の変化は、地球の1年間あたり時速2.5km以下でした。

これはハッブルの11年分のデータがなければ気づけないほど小さな変化です。

木星の風を、時間的にも空間的にもこれほど詳細な解像度で捉えることができるのは、ハッブル宇宙望遠鏡だけなのです。

そこでウォン氏は、ハッブルの観測した豊富なデータをよりよく分析するために、数万から数十万の風ベクトル(方向と速度)を追跡するソフトウェアを開発しました。

これにより、より一貫した速度測定が可能となり、実際に木星大赤斑の外周部の風速が増加しているという、事実を確認できたのです。

しかし、なぜ大赤斑の風速は増加していたのでしょうか? それの意味することはなんなのでしょうか?

その意味を明らかにするには、まだやるべきことが多くあり判断は難しいと研究者は語ります。

ただ、それは嵐を駆動するエネルギーがどうやって起きているのか、何がそのエネルギーを維持しているかを理解するための興味深いデータになります。

木星の雲の流れを示したアニメーション
木星の雲の流れを示したアニメーション / Credit:Wikipedia

天文学者はもう何百年も木星の嵐を研究し続けています。

大赤斑は、木星内部の物質が上昇してできたもので、横から見ると中心部が高く、外側のそうに向かってそれが流れ落ちているウエディングケーキのような構造であることがわかっています。

そして1世紀以上に渡る観測から、それが徐々に大きさを縮小していて、楕円から円形に近づいていることもわかっています。

(とはいえ、それはまだ地球よりずっと巨大です)

海王星などで観測される嵐は、だいたい数年で消滅する傾向があります。

木星の大赤斑についてはまだほとんど何もわかっていませんが、見ることができない分厚い木星の雲の下で、何が嵐を駆動しているのか、他の惑星の嵐と何が違うのか、その結論を出すために、今回の発見はきっと役に立つことでしょう。

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