デンプンは現在とうもろこしやじゃがいもから作られるが、二酸化炭素から人工的に合成する方法が開発された
デンプンは現在とうもろこしやじゃがいもから作られるが、二酸化炭素から人工的に合成する方法が開発された / Credit:canva
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二酸化炭素から「人工デンプン」を合成することに成功!

2021.10.05 17:00:19 Tuesday

デンプンは私たちにとっても重要な栄養素となる炭水化物であり、その他にも工業的な原料としてさまざまな用途に利用されています。

デンプンは植物の光合成によって生成される天然高分子で、これまでは植物を育てなければデンプンを手に入れることはできませんでした。

しかし、中国科学院の研究チームは、二酸化炭素から無機物の触媒を用いて、人工的にデンプンを合成する新しい方法を報告しています。

デンプンの生産は、農耕から工業に移行することになるかもしれません。

研究の詳細は、9月24日付で科学雑誌『Science』に掲載れています。

Chinese Scientists Report Starch Synthesis from CO2 https://english.cas.cn/head/202109/t20210924_284057.shtml Chinese scientists report starch synthesis from carbon dioxide https://phys.org/news/2021-09-chinese-scientists-starch-synthesis-carbon.html
Cell-free chemoenzymatic starch synthesis from carbon dioxide https://www.science.org/doi/10.1126/science.abh4049

植物によるデンプンの合成

光合成によって二酸化炭素が固定されデンプンが作られる。ただしエネルギー効率としては低い。
光合成によって二酸化炭素が固定されデンプンが作られる。ただしエネルギー効率としては低い。 / Credit:canva,ナゾロジー編集部

植物は光合成によって、光と二酸化炭素、水を原料にエネルギーを作り出します。

そして、そのエネルギーを長期的に貯蔵するためにデンプンを形成し、種子や地下茎などに蓄えます。

お米や小麦、トウモロコシといった穀物はデンプンが主な成分で、私たちの食生活において欠かせないものです。

またデンプンは非常に用途が広い高分子で、食料品としての利用は以外にも、製紙用の糊(のり)や医薬品など工業製品へも幅広く利用されています。

そのためCO2を消費して生産できるデンプンの持続的な供給は、気候変動や食糧危機、資源確保といった人類のさまざまな課題をクリアしてくれる重要な戦略に位置づけることができるのです。

しかし、光合成のプロセスによるデンプンの合成は複雑で、このプロセスの理論的なエネルギー変換効率は約2%程度だといわれています。

現在、デンプンの生産には主にトウモロコシが利用されますが、その成長サイクルは100日以上であり、広大な土地が必要となる上、農薬や肥料も大量に消費する必要があります。

広大なトウモロコシ畑
広大なトウモロコシ畑 / Credit:canva

このため、植物生産を経由せずに、二酸化炭素からデンプンを合成する方法は、食糧危機や気候変動に対応する革新的な技術として活躍が期待できるのです。

工業的な方法でデンプンを合成する

今回の研究は、11の主要な反応から二酸化炭素を変換して、人工的にデンプンを合成するといいます。

自然の光合成では、約60もの複雑な生化学合成が伴うため、かなり効率の良い変換を行う技術と言えるでしょう。

ここでは、高濃度のCO2を生物学的触媒モジュールと一体化させ、最初にメタノールに還元し、その後触媒を用いてメタノールをいくつか種類の炭素に変換し、それらを合成してデンプンを作り出します。

この方法は、自然の光合成によるデンプンの生成と比べ8.5倍も効率よく二酸化炭素をデンプンに変換する事ができるそうです。

当然、生産に必要となるスペースも大幅に削減でき、その他農業に必要な資源も削減することができます。

現在は実験段階ですが、このプロセスのコストを十分に落とすことができれば、1立方メートルの装置(バイオリアクター)を使うだけで、3300平方メートルのトウモロコシ畑の年間生産量と同じデンプンを生み出すことができるのです。

これは将来的に、耕作地と淡水資源を90%以上も削減できることが期待できます。

この研究は、将来的に光合成に頼っていたCO2からデンプンの変換を、工業的製造へ切り替えるための足がかりとなるものです。

農薬や肥料の悪影響も回避することができ、人類の食料確保の安定を保証し、さらに脱炭素社会を促進させ、最終的には持続可能なバイオベース社会の形成も促進することにつながると、研究者は話します。

工場で合成される食料を食べる時代は、もうすぐそこまでやってきているのかもしれません。

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