工業的な方法でデンプンを合成する
今回の研究は、11の主要な反応から二酸化炭素を変換して、人工的にデンプンを合成するといいます。
自然の光合成では、約60もの複雑な生化学合成が伴うため、かなり効率の良い変換を行う技術と言えるでしょう。
ここでは、高濃度のCO2を生物学的触媒モジュールと一体化させ、最初にメタノールに還元し、その後触媒を用いてメタノールをいくつか種類の炭素に変換し、それらを合成してデンプンを作り出します。
この方法は、自然の光合成によるデンプンの生成と比べ8.5倍も効率よく二酸化炭素をデンプンに変換する事ができるそうです。
当然、生産に必要となるスペースも大幅に削減でき、その他農業に必要な資源も削減することができます。
現在は実験段階ですが、このプロセスのコストを十分に落とすことができれば、1立方メートルの装置(バイオリアクター)を使うだけで、3300平方メートルのトウモロコシ畑の年間生産量と同じデンプンを生み出すことができるのです。
これは将来的に、耕作地と淡水資源を90%以上も削減できることが期待できます。
この研究は、将来的に光合成に頼っていたCO2からデンプンの変換を、工業的製造へ切り替えるための足がかりとなるものです。
農薬や肥料の悪影響も回避することができ、人類の食料確保の安定を保証し、さらに脱炭素社会を促進させ、最終的には持続可能なバイオベース社会の形成も促進することにつながると、研究者は話します。
工場で合成される食料を食べる時代は、もうすぐそこまでやってきているのかもしれません。