筋肉の傷に「核」が集まってくる新現象を発見! 
筋肉の傷に「核」が集まってくる新現象を発見!  / Credit:William Roman et al . 2021 . Science . Muscle repair after physiological damage relies on nuclear migration for cellular reconstruction . ナゾロジー編
biology

筋肉の損傷時に「細胞の核が傷に集まっていた」ことが確認される

2021.10.20 Wednesday

新たな筋肉再生の仕組みが発見されました。

スペインのポンペウ・ファブラ大学(UPF)で行われた研究によれば、筋線維の再生時に損傷部位に細胞の「核」が集まってくる様子が確認された、とのこと。

損傷部位に集結した核はタンパク質の生産に必須な「mRNA」を爆発的に増産させ、修復素材を現地生産していました。

研究内容の詳細は10月14日に『Science』に掲載されています。

Stunning images show how muscles heal themselves after a workout https://www.livescience.com/muscle-repair-by-roaming-nuclei
Muscle repair after physiological damage relies on nuclear migration for cellular reconstruction https://www.science.org/doi/10.1126/science.abe5620

筋線維の損傷部分に核が集まってくる新現象を発見

筋肉の傷に「核」が集まってくる新現象を発見! 
筋肉の傷に「核」が集まってくる新現象を発見!  / Credit:William Roman et al . 2021 . Science . Muscle repair after physiological damage relies on nuclear migration for cellular reconstruction . ナゾロジー編

私たち動物には、傷ついた筋肉を回復させるシステムが備わっています。

筋肉が損傷すると、損傷部分を穴埋めしようと多くのタンパク質が集まってきて、ある種の「再生キャップ」を形成します。

これら再生用のタンパク質はセントラルドグマに従い、生命の設計図である核内部に収められたDNAと設計図の部分写しであるmRNAをもとに組み立てられていきます。

しかし損傷した場所に向けて、いちいちmRNAやタンパク質を輸送するのは効率的ではありません

そこで今回、ポンペウ・ファブラ大学の研究者たちは、再生中の筋肉の「核の位置」を詳細に観察することにしました。

損傷部分に核が直接移動することで、タンパク質を輸送ではなく現地生産することが可能になると考えたからです。

さっそく研究者たちは、マウスと人間の被験者の両方に筋肉を動かすトレーニング(ジョギングなど)をしてもらい、その後、生きた筋線維を採取(筋生検)して観察を行いました。

すると、運動から5時間以内に筋線維の損傷部分にタンパク質が蓄積している様子が確認されます。

また、この時点では損傷部分と核の位置関係に有意な差はみられませんでした。

しかし運動から24時間後に採取した筋線維を調べたところ、マウスでも人間でも、筋線維の損傷部分に複数の核が集まっていることが確認されたのです。

筋線維は多核であることが知られており、1つの細胞に複数の核が存在していることが知られています。

問題は、集まってきた核たちが損傷部位で何をしているかです。

次ページ核がやってくるとmRNAが爆発的に増加する

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