筋線維の損傷部分に核が集まってくる新現象を発見
私たち動物には、傷ついた筋肉を回復させるシステムが備わっています。
筋肉が損傷すると、損傷部分を穴埋めしようと多くのタンパク質が集まってきて、ある種の「再生キャップ」を形成します。
これら再生用のタンパク質はセントラルドグマに従い、生命の設計図である核内部に収められたDNAと設計図の部分写しであるmRNAをもとに組み立てられていきます。
しかし損傷した場所に向けて、いちいちmRNAやタンパク質を輸送するのは効率的ではありません。
そこで今回、ポンペウ・ファブラ大学の研究者たちは、再生中の筋肉の「核の位置」を詳細に観察することにしました。
損傷部分に核が直接移動することで、タンパク質を輸送ではなく現地生産することが可能になると考えたからです。
さっそく研究者たちは、マウスと人間の被験者の両方に筋肉を動かすトレーニング(ジョギングなど)をしてもらい、その後、生きた筋線維を採取(筋生検)して観察を行いました。
すると、運動から5時間以内に筋線維の損傷部分にタンパク質が蓄積している様子が確認されます。
また、この時点では損傷部分と核の位置関係に有意な差はみられませんでした。
しかし運動から24時間後に採取した筋線維を調べたところ、マウスでも人間でも、筋線維の損傷部分に複数の核が集まっていることが確認されたのです。
筋線維は多核であることが知られており、1つの細胞に複数の核が存在していることが知られています。
問題は、集まってきた核たちが損傷部位で何をしているかです。