毛根が死ぬ理由
私たちの毛は常に死と再生を繰り返しています。
これは毛包と呼ばれる皮膚内の器官(一般的には毛穴と呼ばれる)が、常に毛を作り出しているためです。
俗にハゲと呼ばれる状態が発生してしまうのは、この毛包が縮小し、毛を生み出す機能が失われてしまうために起こります。
そのため、よく一般ではハゲることを「毛根が死んだ」と表現されるのです。
もう少し詳しく説明すると、毛髪は毛母細胞から作られますが、この細胞は毛包内のバジルと呼ばれる領域に存在する「毛包幹細胞」が分化して作り出しています。
毛包が機能しなくなるのは、毛包幹細胞が老化とともに減少してしまうためなのです。
つまり、理屈としては毛包幹細胞を維持することができれば、ハゲを癒やすことが可能になるということなのです。
これまでの研究では、若い状態ではたくさんあった毛包幹細胞が、老化後に減少していることは確認していました。
しかし、生きた動物の老化のプロセスを直接追跡した人はまだいないため、老化によって実際何が起きているのかはよくわかっていませんでした。
そこで、今回ノースウェスタン大学の研究チームは、ハゲのモデルとして生きたマウスを使い、幹細胞の変化をリアルタイムに監視する実験を行ったのです。
チームはマウスの毛包幹細胞に緑色蛍光タンパク質でマークを付け、これを長波長レーザーを使って何日も繰り返し監視し続けたのです。
そして研究チームは、場合によっては1つの毛包を26日間も観察し続け、毛包の分解の全過程を見ることに成功しました。
そこで彼らが見たのは、幹細胞が毛包から逃げ出しているという事実でした。