記憶だけで内臓に炎症が発生すると判明! 病は気からの原理解明か
うつ病などの精神病とは関係なしに、好ましくない環境や嫌な記憶を思い出すだけで、人は頭痛が起こり、胃や腸の調子もおかしくなってきます。
そのような状態に対して、かつては仮病(けびょう)と切り捨てられてられるか「病は気から」と雑な励ましを与えられるだけでした。
しかしイスラエル工科大学で行われたマウスを用いた研究によって、記憶だけで本当に、内臓に深刻な炎症を起こることが判明します。
研究はまず、マウスに薬を飲ませて大腸炎や腹膜炎を起こさせ、脳の反応を調べることからはじめました。
もし脳が免疫にかかわっているなら、体の炎症によって脳の活動パターンになんらかの変化があると考えたからです。
結果、マウスの島皮質と呼ばれる脳領域で、炎症が起きた部位(腸と腹膜)ごとに異なる細胞群が活発化していることが判明します。
そこで研究者たちは、マウスが炎症から回復した後に、発見した細胞群を別々に化学薬品を用いて活性化してみました。
その結果は衝撃的でした。
大腸炎を起こしていた時に活発化していた脳細胞を刺激すると、それだけでマウスは再び大腸炎になってしまったのです。
また腹膜炎を起こしていた時に活発化していた脳細胞を刺激した場合でも、マウスはまた腹膜炎を再発したのです。
この結果は、脳には体の部位ごとに病気(炎症)を記憶する「病気記憶回路」が存在しており、対応する回路を刺激することによって、同じ部位に同じ病気を起こせることを示します。
炎症は免疫細胞を呼び寄せて病原体を殺すために必要な防護反応ですが、炎症が起きると、その場所は痛みや熱を発し、病として認識されるようになります。
また研究者たちは、病気を記憶した回路が特定のストレスと結びつき、一緒に刺激されることがありえると考えています。
そのため、特定のストレスを感じると連動した病気記憶回路が活性化し、ある人は内臓に炎症を起こしてお腹を痛くなり、また別の人では頭痛を感じさせたりするのだと結論しました。
また脳が免疫系を支配しているのならば、自己免疫疾患や関節炎、アレルギーなどの原因も、ある程度は脳にあると言えます。
問題は、なぜ直接病原体を攻撃する手段がない脳に、病気になった場所が記憶されており、しかも脳だけで再現する能力があるかです。