異性の身体を体験すると自己認識はどう変わる?

街中で女性が浴びる痴漢まがいのヤジや口笛――いわゆるキャットコーリングは、決して他人事ではありません。
例えばある調査では、女性が日常で遭遇する不快な状況の42%が言葉によるハラスメントだったと報告されています。
日本のアニメやマンガ、映画の世界でもこのようなキャットコーリングを行う「チンピラ」役が登場し、ヒロインが不快さを感じるシーンがあるので、その情景を思い出すのは難しいことではないでしょう。
しかし男性側には、その屈辱や恐怖の実感がなかなか伝わりません。
というのも男性側はしばしばキャットコーリングは「軽い褒め言葉」や「善意」であり、特に深刻な影響を与えるものではないと考えられがちです。
そこで登場したのが、VRを使ってハラスメントを可視化して追体験させる試みです。
これまでの研究により、異性の体を与えられた人間は、心理的にも身体的にも異性のような反応をとることが報告されています。
たとえばVR体験で反対の性別の身体に入ると自己評価が“男女中間”へ傾くことが知られています。
またVR空間で女性になった男性には「女性は数学が苦手」という固定観念に奇妙な同調が起こり、数学のテスト成績が下がるケースも報告されています。
さらに異性の立場を疑似体験することで理解が深まり、異性の境遇への共感が強まることも知られています。
他にも筋肉質だったり防御力が高そうなアバターでは、熱による痛みの不快感が軽減するなど、感覚の感じ方にも影響があらわれることがわかりました。
ではVRで女性に性転換した場合、男性もキャットコーリングに対して女性のような強い嫌悪権を感じるようになるのでしょうか?
それともあくまで中身の性別の感覚が優先で、あくまでそれは「軽い褒め言葉」で、害のないコミュニケーションという考えを維持し続けたのでしょうか?
そこで今回研究者たちは、男性参加者に女性アバターを与え、キャットコーリングに対する反応を調べることになりました。