“ワームタワー伝説”を検証せよ

線虫(線形動物門に属する小型の生物)は地球上で最も繁栄している動物群ですが、一匹一匹は非常に小さく、自力で遠くへ移動するのは容易ではありません。
彼らの生息環境(例えば地面に落ちて腐敗する果実など)は一時的な資源であり、餌が尽きれば別の新天地を探す必要があります。
しかし極小の線虫にとって、新たな餌場まで散らばって移動することは大きな困難を伴います。
こうした状況で生き延びるため、線虫は「集団で塔を組み上げて高い場所へ達し、他の動物に乗り移って移動する」という巧みな戦略を取ると考えられてきました。
動物が互いの体を連結させて一体となって移動するような行動は自然界では極めて珍しく、スライムカビ(変形菌)や軍隊アリ(ハリアリ亜科)、ハダニ類など限られた生物でしか知られていません。
線虫についても過去に実験室内での観察例はありましたが、この「ワームタワー」現象が野外で本当に起きているのか、そしてその目的が何なのかは長年謎のままでした。
この謎に挑むべく、ドイツのコンスタンツ大学とマックスプランク動物行動研究所の研究チームが共同で研究に取り組みました。