巻貝が持つ「カメラ型の目」と驚異の再生能力
私たち人間の目は、レンズ、角膜、網膜、視神経などで構成される「カメラ型の目」と呼ばれる構造をしています。
実は、スクミリンゴガイもこれとよく似た構造の目を持っているのです。
この巻貝の目は、短い眼柄の先にあり、透明な角膜、楕円形のレンズ、複数層の網膜を備えており、視神経は脳へとつながっています。

しかも、網膜の中には「ラブドメア型」と呼ばれる無脊椎動物特有の視細胞が存在し、その外側には紫外線から組織を守る黒い色素の層もあります。
こうした構造は、人間の目の構造と比較しても非常に高機能です。
しかし、この巻貝が特異なのは「再生能力」です。
研究チームはスクミリンゴガイの目を丸ごと切除し、その後の再生過程を1か月にわたって追跡しました。
すると、わずか24時間以内に傷口は閉じ、3日目には未分化の細胞からなる“ブラストーマ”が出現。
そこから網膜やレンズが再形成され、28日後には視神経まで含めた完全な眼球構造が再生されていたのです。
しかも、その目は元の目とほぼ同じ構造と遺伝子発現パターンを示していました。
この再生は「エピモルフォーシス」と呼ばれる、細胞分裂と組織再構築を伴うメカニズムで進行しており、これは一部のサンショウウオやゼブラフィッシュが持つ再生能力に近いものです。
スクミリンゴガイのような巻貝に、これほど複雑な器官を再生できる仕組みがあったとは、科学者たちにとっても大きな驚きでした。