人間の目の再生に応用できるか?鍵を握る「pax6遺伝子」
再生のカギを握るのは「遺伝子」です。
チームは、スクミリンゴガイの眼球再生過程でどの遺伝子が活性化されているかを解析しました。
その結果、驚くべきことに、ヒトやマウスなど脊椎動物の眼の発生に関わる「pax6(パックスシックス)」という遺伝子が、巻貝の目の再生時にも活発に働いていることが判明したのです。
しかもpax6遺伝子がなければ、目がまったく形成されないことも、CRISPR-Cas9による遺伝子編集で証明されました。
pax6は、脳や目の形成において極めて重要な遺伝子で、ヒトを含む多くの動物で共通して機能しています。
今回の研究では、この遺伝子が再生過程でも中心的な役割を果たしていることがわかり、「再生医療」の文脈でも注目が集まっています。

チームはさらに、スクミリンゴガイの卵を外部で培養し、mRNAを注入して遺伝子発現を操作する技術も確立しました。
これはスクミリンゴガイが「遺伝子操作可能な再生モデル」として本格的に活用できることを意味します。
こうした技術を応用すれば、「目の再生に必要な遺伝子群」を網羅的に特定し、それを人間の幹細胞に導入して視力回復を目指す、といった未来の治療法にもつながる可能性があるのです。
もちろん、巻貝の目と人間の目は完全に同じではありません。
しかしpax6のように“再利用可能な遺伝子回路”が存在する以上、自然界が持つ多様な再生戦略を学ぶことで、人間の限界を超える手がかりが得られるかもしれません。
「目は失えば二度と戻らない」
そう信じられてきた常識が、今、巻貝によって覆されつつあります。
スクミリンゴガイは、複雑な目を1か月以内に再生するばかりか、その過程を制御する遺伝子が人間とも共通していることが明らかになりました。
そしてこの発見は、私たち人間にも「視力の再獲得」という新たな希望を与えています。
再生医療やバイオテクノロジーの発展とともに、私たちは「見えなくなった世界を再び見る」未来に、一歩ずつ近づいているのかもしれません。
無脊椎動物で目が再生で脊椎動物で出来るなんてまずないっしょ
水生生物で周りが水だからやりやすいとかもありそうですね。