「脳年齢」は睡眠で変わる?
今回の発見は、イギリスの40~70歳の男女2万7000人以上を対象にした大規模研究によってもたらされました。
研究チームは、参加者の睡眠の質や睡眠習慣に関する自己申告データと、脳のMRI画像という詳細な医療データを組み合わせて解析しました。
驚くべきは、睡眠が悪い人ほど「脳が老けて見える」傾向が強かったという点です。
ここでいう「脳が老けて見える」とは、最新のAIと脳画像技術によって、脳のMRI画像から“脳年齢”を推定するという方法を指します。
人の脳は年齢とともに徐々に萎縮したり、表面の皮質が薄くなったり、血管がダメージを受けやすくなったりします。
こうした微細な変化を1000以上の指標で数値化し、AIに学習させることで、個々人の「脳年齢」を推定できるようになりました。
研究ではまず、持病のない最も健康的な参加者の脳画像をもとに「年齢相応の脳とはどういうものか」をAIに学習させました。
そして全ての参加者に対し、実年齢と脳年齢のギャップを算出したのです。
すると、睡眠の質が悪い人ほど、実年齢と脳年齢のギャップが広がり、実年齢より脳年齢のほうが上回るという傾向が見つかりました。
一方で、睡眠の質が良い人は、脳年齢と実年齢の差がほとんど見られなかったのです。
さらに詳しく分析すると、「夜型タイプ」や「睡眠時間が短い・長すぎる」といった人ほど、脳の老化が加速しやすいことも判明しました。
また不眠やいびき、日中の強い眠気といった複数の睡眠問題が重なると、リスクがさらに高まることが示されています。