なぜ睡眠が脳を若く保つのか
では、なぜ睡眠の質が脳年齢にここまで強く影響するのでしょうか。
研究ではいくつかのメカニズムが指摘されています。
まず注目されているのが「炎症」です。
睡眠不足や睡眠障害は、体の炎症レベルを上昇させることが知られています。
炎症は脳の血管を傷つけたり、神経細胞の死を促進したり、アルツハイマー型認知症の原因物質である異常なタンパク質の蓄積を引き起こすことがわかっています。
実際、研究では血液検査データも利用し、炎症が睡眠と脳年齢の関係の一部を説明できることを確認しています。
次に、脳内の老廃物除去システムの働きも重要です。
このシステムは主に深い睡眠中に活性化し、脳内にたまった有害物質を排出する役割を持っています。
睡眠が不十分だと、この“お掃除”が滞り、脳にダメージが蓄積しやすくなります。
さらに、睡眠の質が悪い人は、肥満や糖尿病、心血管疾患といった生活習慣病のリスクも高まることが知られています。
これらの疾患そのものが脳の老化や認知症の危険因子になるため、睡眠が脳の健康と深く結びついていると考えられるのです。
「脳の老化」は防げる、まずは睡眠の見直しから
脳の加齢そのものを完全に止めることはできません。
しかし睡眠の質を高めることで、脳年齢の“加速”を食い止めることは十分可能であると、今回の研究は教えてくれます。
しかも、睡眠の質は生活習慣を少し見直すだけでも改善が期待できます。
就寝・起床時間をできるだけ一定にする、寝る前のカフェインやアルコール、スマホやパソコンの使用を控える、寝室を静かで暗く保つ、こうしたシンプルな工夫が、将来の脳の健康を守る第一歩となります。
毎日の睡眠を“脳の若さを守るための最良の投資”と考えて、睡眠習慣を見直してみるといいかもしれません。