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Credit: Shinji Sugiura(2025, CC BY-SA)
insect

「音を出すサナギ」の仕組みを解明、天敵への防御システムか

2025.12.09 17:00:23 Tuesday

実はサナギは静かにジッとしているだけではないようです。

神戸大学大学院 農学研究科を中心とした研究グループは、スズメガ科の一種「エゾスズメ」のサナギと幼虫が、呼吸用の小さな孔「気門」から空気を吹き出すことで音を発していることを明らかにしました。

サナギが空気を使って音を鳴らす仕組みが明確に解明されたのは、世界でも初めてです。

さらに、その音はヘビの「シューッ」と鳴くような音に似ており、天敵への威嚇の意味合いがあるとも示唆されています。

研究の詳細は2025年12月7日付で科学雑誌『Journal of Experimental Biology』に掲載されました。

スズメガの蛹が鳴く仕組みを解明 笛のように空気を吹き出して発音する https://www.kobe-u.ac.jp/ja/news/article/20251208-67330/
Sound production by hawkmoth larvae and pupae through abdominal spiracles https://doi.org/10.1242/jeb.251346

動かぬサナギが「音」を出す、その正体は?

セミやスズムシといった昆虫が「鳴く」のは、仲間を呼んだり、求愛したりするためだと広く知られています。

しかし、幼虫やサナギの段階で「音」を出す昆虫は、それほど多くはありません。

しかも、ほとんど動かないサナギがいったいどうやって音を発するのか?

この謎は長年、科学者たちを悩ませてきました。

研究グループは、兵庫県で採集したエゾスズメを室内で飼育し、幼虫とサナギをピンセットで軽く刺激することで「捕食者による攻撃」を再現しました。

その結果、4齢以降の幼虫と、蛹(サナギ)の多くが「シューッ」という噴気音を発することが観察されました。

では、その音はどこから生まれるのでしょうか。

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蛹を水に沈めて音とともに放出される気泡から発音部位を推定/ Credit: Shinji Sugiura(2025, CC BY-SA)

詳細な観察と実験の結果、幼虫では腹部末端(第8節)の1対の気門、サナギでは腹部中央部(第2〜第7節)の6対の気門から空気が勢いよく吹き出されることで音が発せられることが突き止められました。

気門をラテックスでふさいだ実験では、幼虫では該当する1対、サナギでは6対すべてをふさいだ場合のみ音が出なくなり、逆に1対でも開放していれば音が出るという結果になりました。

音を出すために体をこすり合わせるような動作や特別な構造は確認されず、「空気を吹き出す」こと自体が音の正体だったのです。

次ページ天敵をだます「サナギの防御戦略」と今後の展望

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