リクガメのオスはメスを「崖から突き落とす」ことがあると判明――『楽園』が地獄に変わるとき
リクガメのオスはメスを「崖から突き落とす」ことがあると判明――『楽園』が地獄に変わるとき / Credit: Arsovski et al., Ecology Letters (2026)
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リクガメのオスはメスを「崖から突き落とす」ことがあると判明――『楽園』が地獄に変わるとき

2026.05.11 19:35:01 Monday

北マケドニアのマケドニア生態学会(MES)などが行った16年に及ぶ野外調査によって、北マケドニア・プレスパ湖に浮かぶ小さな島ではリクガメのオスのしつこい嫌がらせがメスを死に追いやり、島内で絶滅の道を進んでいることが16年間の野外調査で明らかになりました。

また研究では、慢性的な嫌がらせに加えて、オスに追い詰められて崖から転落死するメスがいる場合があることも示されています。

島には成体を襲う天敵が一切おらず、約1,000匹ものリクガメがひしめく「楽園」のような場所です。

しかし研究者たちは、このままメスの数の減少が続けば2083年には島の最後のメスが死亡し、やがてこの個体群は消滅すると予測されました。

いったいなぜ、天敵もいない「楽園」で、リクガメたちは自滅の道を歩んでいるのでしょうか?

研究内容の詳細は2026年1月26日に学術誌『Ecology Letters』にて発表されました。

Self‑destructive behaviour among Hermann’s tortoises on a Macedonian island is leading to ‘demographic suicide’ https://theconversation.com/self-destructive-behaviour-among-hermanns-tortoises-on-a-macedonian-island-is-leading-to-demographic-suicide-282081
Sex Ratio Bias Triggers Demographic Suicide in a Dense Tortoise Population https://doi.org/10.1111/ele.70296

天敵ゼロの島で、何が狂い始めたのか

天敵ゼロの島で、何が狂い始めたのか
天敵ゼロの島で、何が狂い始めたのか / Credit: Xavier Bonnet / The Conversation (CC-BY-ND)

「保護さえすれば、動物は安全に暮らせるはずだ」

多くの人がそう考えるのではないでしょうか?

天敵を排除し、開発を止め、環境を守ればいい。

保全の原則は、少なくとも直感的にはシンプルです。

ゴレム・グラード島は、まさにその理想を体現したような場所でした。

プレスパ湖に浮かぶ面積わずか18ヘクタール――東京ドーム4個分ほどの小さな島は、テーブルのような構造をしています。

頂上には森が広がる平らな高原があり、その周囲を高さ20〜30メートルの切り立った崖がぐるりと囲んでいます。

ここではイノシシも犬もネズミも人間もおらず、リクガメの成体を襲う捕食者はゼロ。

温暖な地中海性気候は爬虫類にとって申し分ありません。

朝日を浴びた後、リクガメたちは牧草地で草を食み、休息し、オスは交尾のときに甲高い鳴き声を上げます。

その結果、この島のリクガメは1ヘクタールあたり約46〜64匹という、ヘルマンリクガメでは記録上最高クラスの密度に達していました。

2008年に北マケドニア、セルビア、フランスの国際研究チームが現地調査を始めたとき、島のリクガメもまた「繁栄する個体群」そのものに見えていたのです。

ここまでの話を聞く限り、この島のリクガメに問題があるようには思えません。

しかし、10年以上にわたってデータを積み重ねるうち、研究者たちはまったく異なる現実に気づき始めました。

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