母親に匂いがあれば、見知らぬ女性でも懐く?
これまでの研究で、母親の体臭は、赤ちゃんの安心や社会的認識のための重要なシグナルとして機能することが分かっていますが、一方で、それが脳活動にどんな影響を与えているかはほとんど知られていません。
研究チームは今回、母親と赤ちゃんの繋がりの一端が「母親の匂い」にあるのではないかと考え、実験を開始しました。
本研究では、62名の母親とその赤ちゃん(平均生後7カ月)、それから母親とほぼ同じ年齢のボランティア女性にも協力してもらっています。
実験の前に、母親たちには2晩連続で同じTシャツを着て寝てもらい、母親の匂いのついたTシャツを持ってきてもらいました。
実験室では、母親とその赤ちゃんの脳はを調べるため、電極キャップを装着させ、最初に背中合わせで、次に向かい合わせに座ってもらいます。
これで、母親と赤ちゃんの脳波の同期レベルを確かめます。
続いて、赤ちゃんは、ボランティア女性(=見知らぬ女性)と向かい合った状態で座り、同じように脳波を測定。
その後、母親の匂いのついたTシャツ、あるいは一度も着られていない新品のTシャツを赤ちゃんに持たせた状態で、脳波を測定しました。
その結果、母親と赤ちゃんの脳波の同期率は平均して高かったのですが、背中合わせより、お互いが見える向かい合わせの状態の方が、同期率はより高くなっていました。
一方で、見知らぬ女性との脳波の同期率は、母親より低いものとなっています。
ところが、母親の匂いのするTシャツを持たせたところ、見知らぬ女性との間でも、母親と対面しているときと同じレベルの同期率が見られたのです。
また、赤ちゃんが見知らぬ女性に、笑顔で視線を送る回数も大幅に増えていました。
対照的に、新品のTシャツでは、同期率が著しく低く、笑顔の頻度も減ったとのこと。
実験の様子はこちらから。
以上の結果から、赤ちゃんは母親の匂いに強い安心感を覚えており、それが見知らぬ人でも活用できることを示唆しています。
ただし、これが男性にも使えるかどうかは分かりません。
赤ちゃんは、視覚に頼って相手を正確に見分けるスキルが十分に発達していないため、女性であれば母親と錯覚する可能性はあります。
そのため、匂いが重要なのです。
しかし、ゴリゴリの男性を目の前にすれば、さすがの赤ちゃんも母親ではないと気づくでしょうから、匂いのごまかしも通用しないかもしれません。
赤ちゃんに懐かれない男性は、また別の解決策を見つける必要がありそうです。