隕石がカリ長石を巻き上げると大量絶滅が起きる
研究者が発見したのは、大量絶滅が発生したときの隕石が巻き上げた塵には、「カリ長石」と呼ばれる鉱物含有量が高いということでした。
カリ長石(K-feldspar)は、カリウムを多く含む長石のことです。
長石は、花崗岩や火山岩の中にも多く含まれる、毒性も特に持たない地球ではありふれた鉱物です。
では、なぜ隕石の巻き上げた塵にカリ長石が多く含まれるときに大量絶滅が起きるのでしょうか?
隕石が落下した際は、大量の粉塵が空へ舞い上げられます。
これが太陽光を遮り地球に冬をもたらすことが、大量絶滅の主な要因と考えられていました。
しかし、こうした塵の作用は通常2~3年で収まります。
巨大な隕石ほど、落下地域に深刻な被害をもたらし、大量の塵を巻き上げますが、実際のところ地球全体の生物に対しては、それほど深刻な影響を与えない可能性があるのです。
しかし、隕石落下地点に大量のカリ長石を含む地盤があり、これが大量に大気中へ舞い上げられた場合、状況が変わってくるのだといいます。
カリ長石は無毒ですが、大気中で氷の核となる強力な鉱物エアロゾル粒子です。
そのため、この鉱物の粉塵が大量に舞い上げられた場合、地球全体の雲の形成に大きな影響を与える可能性が高いのです。
氷の粒を多く含んだ雲が形成されると、その雲は太陽光をより多く透過させるようになります。
地球の温度を保つ要因の1つが、雲の太陽光反射率にあります。
太陽光をあまり反射しない雲が大量に形成されると、地球にはより多くの太陽光が降り注ぎ、結果的に地球の気温上昇などの気候変動を生み出すようになるのです。
またこうした軽い塵は、太陽光を遮って冬をもたらすような塵と異なり、大気中に長く留まる性質があります。
推定では、こうした塵は最大10万年も影響を及ぼし続ける可能性があるというのです。
こうして太陽光を受け入れやすい状況になった地球は、火山活動などに伴う温室効果ガスの排出に対して、非常に敏感に反応しやすくなります。
つまり、温暖化が容易に起きやすい状況になるのです。
大量絶滅の原因には、隕石の他にも火山活動の活発化による大噴火などが提案されていますが、これも隕石同様に必ずしも大量絶滅と相関しているわけではありません。
今回の発見は、こうした噴火の影響についても、隕石が舞い上げたカリ長石が絡んでいる可能性を示唆しているのです。
大量絶滅は、隕石のサイズが問題なのではなく、カリ長石を多く含む岩盤に当たったかどうかに相関していると研究者は語ります。
これは今後の大量絶滅の研究に新しい道をもたらす発見です。
しかし、大量絶滅の要因が、鉱物エアロゾルにあったとすると、我々にとっては深刻な問題になるかもしれません。
過去において、大気中に鉱物エアロゾルを増やす要因は隕石落下しかありませんでしたが、人類の活動は大気中への鉱物エアロゾルの排出を増加させています。
これが同様のメカニズムを発生させる恐れは、十分にあるかもしれません。