シャチは意図的にクジラを助けたのか
慈善団体・クジラとイルカの保護協会(WDC)の海洋生物学者であるエーリッヒ・ホイト(Erich Hoyt)氏は「シャチがザトウクジラを攻撃しなかった理由は不明だ」と話します。
同海域ではシャチがハクジラを捕食するシーンが度々報告されていますが、ザトウクジラは”季節はずれの食べ物”だった可能性もあります。
また、単にシャチがお腹いっぱいだったか、やせ衰えたクジラを狩っても、大した栄養にはならないと判断したのかもしれません。
あるいは、寄生虫だらけのクジラを避けた可能性も考えられます。
それでも調査隊にとって、シャチたちの行動はほとんど利他的なものに見えたという。
しかしやはり、今回のケースは極めて稀で、ほとんどの場合、クジラはシャチの餌食になります。
その証拠と言うべきか、先日このニュースと並行して、シャチの群れが世界最大の動物であるシロナガスクジラの成体を殺し、捕食した記録が、フリンダース大学(Flinders University・豪)により公式に発表されました。
2019年3月に同じブレマー湾にて、約14頭のシャチが水深70mでシロナガスクジラを狩猟したという。
シャチがシロナガスクジラを仕留めた例は、世界でも初めてとのことです。
シャチは複雑な社会生活を営み、共感や感情に関する脳領域が高度に発達している賢い生き物です。
シャチが同じ海の生き物に対して利他的な感覚を抱いているかどうかは不明ですが、今回ばかりは海の仲間に同情心を見せたのかもしれません。