カガリグモが「哺乳類」を食べたケースはない
シュロップシャー在住のワイルドライフ・アーティスト、ベン・ワダムズ(Ben Waddams)氏は昨年7月、自宅の外壁に張られてあったカガリグモ(学名:Steatoda nobilis)の巣に、コウモリの赤ちゃんがかかっているのを発見しました。
ワダムズ氏はそれを写真に撮り、ソーシャルメディアで公開。
その画像がアイルランド国立大学(NUI)の動物学者であるミシェル・デュゴン(Michel Dugon)氏の目に留まりました。
デュゴン氏は、NUIのヴェノム・システム・ラボ(Venom Systems Lab)の所長を務め、生物毒の進化について研究しています。
氏は画像を目にし、「カガリグモがコウモリを捕食するケースを始めて見た」と話します。
こちらが実際の画像です。体の変色した部分は、クモが食べたことを示します。
カガリグモはもともと、イベリア半島の南西方向にあるマデイラ諸島とカナリア諸島の固有種でした。
しかし、1879年にイングランド南部に到達し、その後スコットランドやウェールズ、アイルランドに拡散。
現在では、ヨーロッパの他地域やアジア、アメリカ大陸でも普通に見られます。
世界には鳥を捕食するような巨大グモがいますが、カガリグモはクロゴケグモと近縁で体も小さく、哺乳類を捕食した例はありませんでした。
カガリグモはゴケグモ属と同じ神経毒を持っており、この毒を使ってトカゲを麻痺させ、捕食した例が報告されています。
大人のコウモリも巣にかかる!
デュゴン氏によると、今回コウモリを捕食したカガリグモは、成熟したメス個体と同定されています。
また、巣にかかったのは赤ちゃんのコウモリで、ワダムズ氏の自宅の屋根裏に住んでいたコロニーのうちの1匹でした。
それを知ってか知らずか、カガリグモはコウモリの出入りする隙間の真下に巣をかまえ、そこに運悪くコウモリが引っかかったようです。
コウモリの赤ちゃんは、巣から逃げられないよう、糸でぐるぐる巻きに固定されていました。
さらに驚くべきは、その後、1匹の大人のコウモリが巣にかかったことです。
ワダムズ氏が観察したところ、コウモリはまだ生きていたので、巣からすくい上げて、隣の壁に放したとのこと。
晴れて自由の身となったコウモリは、すごすごと屋根裏のねぐらへ帰っていったといいます。
コウモリを食べるクモは、南極大陸を除くすべての大陸で確認されています。
今回の衝撃的ニュースから、”コウモリを狩れるクモ”としてカガリグモが正式に仲間入りしたようです。