バイオ7のVR体験に匂いを追加
「バイオハザード7」は2017年にカプコンが開発した、現在のところもっとも凝ったVRゲームの1つであり、非常に強烈なホラー体験が楽しめる人気コンテンツです。
ホラーゲームでありながら、「怖すぎる」という苦情が殺到したというこのゲーム。
それはおぞましいグラフィックや巧みなゲーム構成もあるでしょうが、VR体験がいかに強烈な臨場感をもたらすかの証になっています。
買ったけど怖くて途中でやめてしまったという人も多いでしょう。
しかし、VRがいかに高い臨場感と没入感をともなうと言っても、このシステムが刺激しているのは基本的に人間の五感のうちの2つ「視覚」と「聴覚」のみです。
残りの感覚である「触覚」「味覚」「嗅覚」も追加できれば、VRはさらなるリアリティを再現可能になるでしょう。
しかし、味覚や嗅覚については主に化学物質に対する神経の反応であるため、なかなか再現が難しく、VR環境での効果はあまり良くわかっていません。
そこで今回の研究者たちは、強烈なVR体験を提供するバイオハザード7の世界に匂いを追加することで、ユーザーの心理にどのような変化が起こるかを調査してみました。
実験には22人の被験者が参加。このうちバイオ7をプレイ済みの人は1人だけでした。
ゲームのプレイ中、被験者はVRヘッドセットと共に、鼻の下に柔らかいプラスチックチューブを固定して、ここから匂いを生む揮発性物質を送られます。
上は実験の様子を示した画像で、3のスペースで匂いを合成。2のスペースでゲーム中のプレイヤーに送られます。研究者は4のエリアで監視中です。
実験にもちいられた臭気の元となる揮発性物質は、以下の2つです。
1つは森にいる感覚を高める、刈りたての草のような匂いをもたらす「青葉アルコール(cis-3-hexen-1-ol)」。
もう1つは、「有機硫黄化合物(ジメチルトリスルフィド)」です。
これは玉ねぎのような臭気と表現されますが、初期段階の死体で細菌分解が生成する物質でもあるといいます。
できればあまり嗅ぎたくはない匂いですね。
参加者には匂いのある、無しで同じVR環境の世界を2回プレイしてもらいました。
そして各ゲームプレイの直後に、ゲームプレイ全体の「臨場感」(自分が特定の場所や時間に存在している感覚)と、各シーンへの没入感を評価するアンケートに回答してもらいました。
またプレイヤーの心拍数、体温、皮膚電気活動など生理学的な測定値も収集されました。
皮膚電気活動はあまり馴染みのない単語かもしれませんが、これは皮膚の電気抵抗から発汗について調べるものです。
これらの総合的な結果から、研究者はVRにおける匂いの効果を評価しました。