精子を泳がせて最高の個体を選別するチップ
自然の生殖において卵管に到達できるのは、放たれた約1億個の精子のうち、たったの数百個だけです。
粘液の流れに逆らって泳げる「運動性の高い精子」だけが卵子に到達できるのです。
研究チームは、この自然の選別作用を利用して、傷つけることなく「最高の精子」を選び出す方法を考案しました。
開発された「精子を選出するチップ」は、4つのセクションから成り立っており、以下の順番で作用します。
- 卵管液(卵管から出る液)を液体注入セクション(画像左端のチューブ部分:Flow inlet)に注入
- 精子サンプルを注入(画像中央の小さい部屋:Sample inlet chamber)
- 卵管液が溝(画像a→b→c)に沿って流れると、精子は「流れに逆らって泳ぐ性質」により、収集セクション(画像中央の大きい部屋:Collecting chamber)に向かう
- 元気な精子は収集セクションに集まる
- 死んだ精子や動かない精子は溝cを通って流され、廃棄物回収セクション(右端の大きい部屋:Waste Collection chamber)に集められる
運動性の高い精子の性質を利用して自然な仕方で「最高の精子」を選出できるのです。
実際、この方法で回収された精子は運動性が非常に高く、損傷もほとんど見られませんでした。
しかも、わずか1時間で選別でき、作業者の訓練もほとんど必要ないとのこと。
さらに、開発された「精子を選出するチップ」は非常にコンパクト(75×25mm)であり、安価で製造できます。
研究チームによると、「チップの商業コストは5ドル(約610円)未満」とのこと。
さて今回の開発により、不妊治療における経済的負担は大きく軽減されるでしょう。
妊娠を望むカップルたちが、安価で「最高の精子」を選出できるようになるのです。