世界最大級の「地下都市」となる可能性
地下都市が発見されたミドヤト地区は、すでに歴史文化の豊富な場所で、ユネスコの世界遺産として保護されています。
のどかな田園風景の中に広がり、80の村と100以上の教会、70以上の修道院からなります。
ミドヤト地区には何千年も前から人々が定住し、古代のアッシリアからペルシャ、ギリシア、ローマ、そしてオスマン帝国にいたるまで、あらゆる帝国に支配されてきました。
それゆえ、歴史的に重要な遺産が混在して残されています。
中でも、今回の地下都市は、過去最大級にして重要な発見となりました。
マティアテ(Matiate、「洞窟の街」の意)と命名されたこの地下都市は、約2年前に始まったミドヤト地区の大規模な清掃・保全作業の中で偶然発見されたものです。
作業員がある洞窟を掃除していたところ、隠された通路を発見したといいます。
その後、通路を掘り進めると、多数の部屋やトンネル、隠し通路、壁画などが露わになりました。
まだ総面積の3%ほどしか発掘されていませんが、すでに礼拝堂や井戸、貯蔵用のサイロ(倉庫)など、合わせて49室が見つかっています。
マルディン博物館の館長で、マティアテの発掘責任者を務めるガニ・タルカン(Gani Tarkan)氏は、次のように説明します。
「この地下都市は当初、隠れ家や避難するための場所として建設されたのでしょう。
周知のように、2世紀当時、キリスト教は公式な宗教ではなく、迫害対象となっていたからです。
キリスト教を受け入れた家族や集団は、ローマの迫害から逃れるため、地下都市に避難するのが一般的でした。
マティアテ(Matiate)もそのために作られた居住空間と見られ、少なくとも6~7万人が生活できたと推定されます」
トルコでは、地下都市や洞窟ネットワークの発見は珍しくありませんが、これほど大規模なものは極めて稀です。
専門家らは、「マティアテはこれまでに見つかった地下都市の中で、史上最大のものになるだろう」と予測しています。
トルコではすでに40以上の精巧な地下都市が発見されていることを考えると、これは驚くべき発言です。
たとえば、トルコ中央部のカッパドキアにあるデリンクユ(Derinkuyu)は、8層以上にわたる地下都市で、深さは80メートルにも及びます。
この複合体は、換気シャフト、井戸、水タンク、厩舎、アパートメント、共同墓地を完備し、内側からしか開けられない1000ポンド(約450キロ)の石扉で保護されています。
しかしダルカン氏は、今回の発見がそれをはるかに凌ぐものになると考えています。
「これほど広大な面積に広がる地下都市は他にありません。
マティアテの全貌が明らかになれば、これは真に世界に衝撃を与える地下都市となるでしょう」