がん細胞を強制変異でステルス解除させ免疫に殴らせる治療法が開発
がん細胞を強制変異でステルス解除させ免疫に殴らせる治療法が開発 / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
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がん細胞を強制変異でステルス解除させ免疫に殴らせる治療法が開発

2022.04.22 Friday

がん細胞をバグらせる治療法が進んでいます。

イタリアのトリノ大学(University of Turin)で行われた研究によれば、がん細胞を強制的に変異させることで、免疫療法の効果が上がることが判明した、とのこと。

がん細胞は変異によって免疫療法から逃れるステルス能力を獲得することが知られていますが、外部から「望まぬ変異を強制」することで、自分のステルス能力を台無しにする余計なタンパク質(新抗原)を作らせることが可能になります。

がん細胞の武器である変異を人類が乗っ取り操作できるようになれば、免疫療法の効果を劇的に高めることができるでしょう。

研究内容の詳細は『Journal of Clinical Oncology』にて公開されています。

Temozolomide Followed by Combination With Low-Dose Ipilimumab and Nivolumab in Patients With Microsatellite-Stable, O6-Methylguanine–DNA Methyltransferase–Silenced Metastatic Colorectal Cancer: The MAYA Trial https://ascopubs.org/doi/full/10.1200/JCO.21.02583 6262 – Emergence of tumor mismatch repair deficiency and increased mutational burden in blood and tissue of metastatic colorectal cancer patients treated with temozolomide https://www.abstractsonline.com/pp8/#!/10517/presentation/20869

がん細胞のステルス能力のせいで免疫療法は行き詰っていた

がん細胞を変異させれば免疫で殴れるようになります
がん細胞を変異させれば免疫で殴れるようになります / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

人間の免疫能力を解き放つ免疫療法は、多くのがんに対して優れた効果を発揮します。

がん細胞は人間の免疫システムを抑え込む能力がありますが、免疫療法には、がん細胞による免疫の抑え込みを解放する作用があり、がん細胞に対する免疫システムの再攻撃を可能にします。

ボクシングで例えるならば、免疫療法には、がん細胞によって押さえつけられていた戦意が解放する効果を与えていると言えるでしょう。

(※チェックポイント阻害剤によりT細胞にかせられていた免疫抑制効果が解放されます)

しかし、いくつかのがん細胞は変異によって、免疫療法から逃れるステルス能力を獲得することが知られていました。

免疫療法は人間の免疫システムを基本としているために、免疫が上手くがん細胞を認識できなければ、効果は得られません。

再びボクシングで例えるならば、ステルス能力によって、がん細胞が迷彩によってリングに溶け込んでしまい、パンチがあたらなくなっている状態と言えます。

これでは免疫療法によって戦意が回復しても、敵を認識できないため攻撃ができません。

そこで近年になって、ステルス化したがん細胞を免疫に認識されるさまざまな方法が開発されてきました。

(※たとえば以下の研究では、がん細胞を1度取り出して半殺しにして戻すことで、がん細胞に介錯信号を発せさせステルスを解除させます)

「半殺し」にしたがん細胞を体に戻すと免疫療法が上手くいくと判明!

一方で最近になって注目されているのが、がん細胞に対して変異を与える手法です。

次ページがん細胞に対して「望まぬ変異」を強制する

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