自分ではわからない「自分の第一印象」を教えてくれるAIが開発
「第一印象が全て」と言う人は、社会において一定数存在します。
そうした人々は一般的に、脳の働きは顔に出るため、顔を見るだけでも、人となりや知性を判断できると考えているようです。
その判断が正しいかどうかは不明ですが、心理学において相手に与える印象全体の「55%」が視覚情報によって決定されることが知られています(メラビアンの法則)。
また日常的な経験からも、私たちの多くは第一印象によって相手の年齢・知性・信頼性・性的魅力を判断しています。
近年の社会心理学の研究では、これら第一印象が採用試験や法廷での刑事判決に至るまで、さまざまな分野において、無視できない要素として機能していることが報告されています。
ルックスがいい人は、能力が多少劣っていても企業に採用されやすく、暴力事件などの刑事事件ではより軽い判決が言い渡される傾向があるのです。
これらの事実は、第一印象が身近な人間関係に影響するだけでなく、会社の利益や刑罰の重さなど社会正義にまで影響していることを示しています。
しかし、人間の顔のどのような部位のどんな配置が、特定の第一印象の要素……たとえば「高い信頼感」や「強さ」に影響するかは不明でした。
本人が魅力的にみえると思って実行したオシャレが大失敗に終わるという悲劇も、自分の第一印象が他人にどのように見えるかが自分では判断できないことに起因します。
親兄弟や友達などに判断してもらうことである程度の「地雷撤去」は可能ですが、それらの人々は既に自分のことをある程度知っているため、まるで自分を知らない人が抱く「第一印象」の判断は不可能です。
そこで今回、プリンストン大学の研究者たちは、コンピューターによって自動生成されたリアルな1000人の顔写真の第一印象を、約4000人の参加者に評価してもらいました。
評価内容は約30項目に及ぶ「魅力」「信頼感」「親しみやすさ」「知性」「記憶への残りやすさ」「強さ」などの第一印象についてです。
そして得られた顔写真と第一印象の関係をAI(ニューラルネット)に提示し、どんな顔の人がどのような第一印象を与えるかを学習させました。
結果、AI(ニューラルネット)は顔写真と第一印象の関係を学習し、大多数の人間と一致する第一印象を回答できるようになりました。
たとえば、多くの人が「魅力が高い」「親しみやすい」と評価した顔写真に対して、AIもまた同じように「魅力が高い」「親しみやすい」と判断を下すことができるのです。
この学習済みのAI(ニューラルネット)を用いることで、自分の客観的な第一印象を知ることが可能になります。
また研究者たちはAI(ニューラルネット)による評価を参考にして、写真の撮り方や表情を工夫することで、第一印象の特定の項目を高めたり抑えたりすることが可能になると述べています。
そのため、開発されたAI(ニューラルネット)は、より魅力的な選挙ポスターを作成したいと望む政治家などにとって、垂涎の的となるでしょう。
ですが、この技術の真の価値は映像加工技術に与える影響にあります。