アポロ11号の土より17号の土のほうが植物の生育に適していた
異変は植物が成長するにつれて、明らかになりました。
月の土を模倣した人工土と本物の月の土で育てられた植物を比較したところ、6日目の段階で既に、本物の月の土で育てられた植物は小さく、根も短くなっていたのです。
さらに16日目になると違いはさらに大きくなりました。
人工土で育てられた植物が順調に成長しているのに対して、本物の月の土で育てられた植物は明らかに生育が遅く、なかには葉が「酷い発育不全」を示す濃い緑色に変色してしまうものもでてきました。
研究者たちが植物で働いている遺伝子を調べたところ、最も発育不全を強く示していた個体では、1000以上もの遺伝子が通常とは異なる働きかたをしていることが判明します。
また違いのみられた遺伝子の多くは、塩分や金属、酸化ストレスなどに反応するものであることが判明します。
これらの結果は、植物たちは月の土をストレスが多い土壌、つまり生育に適していない土とみなしていることを示します。
ですがより興味深い点は、土が採取された場所によって、生育やストレス反応に固有の偏りがあることでした。
たとえばアポロ11号が着陸した周囲の土は植物とってストレスが多くの生育に不向きである一方で、アポロ17号が着陸したあたりの土では比較的ストレスが少なく生育が順調に進んでいました。
つまり月では農業をするにあたり「いい土」と「良くない土」があったのです。
しかし大気もなく風も吹かない月で、いったいどうしてこんな差がうまれてしまったのでしょうか?