赤ちゃんに人気な名前が入れ替わるメカニズムを解明!
2021年の赤ちゃんの名前ランキングによれば、男の子の1位には「蓮(レン)」女の子の1位には「紬(つむぎ)」と「陽葵(ヒマリ)」が同着で並んでいます。
一方で1980年代では男の子の1位には毎年のように「大輔(ダイスケ)」、女の子の1位には圧倒的に「愛(アイ)」が選ばれていました。
このように、赤ちゃんにつけられる人気の名前は時代とともに変化し続けています。
しかし赤ちゃんにつけられる名前の人気が、どんな仕組みで変動していくのかは、詳しくわかっていませんでした。
「赤ちゃんにつけられる名前は時代を映す鏡である」との説はよく耳にするものの、変化の原動力については特定に至っていなかったのです。
そこで今回、ミシガン大学の研究者たちは米国の社会保障局で87年にわたり記録された赤ちゃんの名前のデータベースを使用して、変動のパターンを調べることにしました。
すると、ある時点で人気である赤ちゃんの名前(100人に1人レベル)は平均して年に1.6%ずつ減少していく一方で、最も不人気な名前(1万人に1人レベル)は平均して年に1.4%ずつ増加していくことが示されました。
この結果から研究者たちは、赤ちゃんの名前には「人気そのものが人気を減らす」負のサイクルが働いていると結論しました。
同様のパターンは「流行の犬種」や「流行のスカートの長さ」でも報告されています。
日本でもかつてコーギーブームやチワワブームなど複数の犬種のブームが起きましたが、犬種の認知度が高まると流行が途絶えてしまいました。
同様に流行のスカートの長さも時代によって変化を続けており、新たに流行している長さは以前に人気のあった長さとは異なるものになっています。
どうやら流行が一般化すると人々は興味を失ってしまうようです。
このような現在の頻度(人気度)によって未来の頻度(人気度)が決定される仕組み(頻度依存的選択)は生物においても存在が知られており、体の形や免疫能力などにかかわるさまざまな遺伝子が影響を受けています。
ここには生物に本質的に備わった多様性を維持しようとする原理が働いている可能性があります。
例えば致死性ウイルスの流行や環境の激変が起きて種が滅びかけた場合、多数派が排除され極端な性質を持つ少数派が生き残ることが知られています。
赤ちゃんの名前の人気と生物の進化は全く異なる現象に思えますが、現在の人気度が未来の人気度に影響する点は共通しています。
子供を特別にしたいと願う親の意識は、遺伝子レベルで多様性を維持しようとする生命の仕組みと関係しているのかもしれません。
研究者たちは赤ちゃんの名前を変異し続ける遺伝子として考え、人気の名前の出現や盛衰パターンを解明することが、現実の生物進化の理解にも役立つと述べています。