不安定な地球の自転
うるう秒とうるう年は何が違うのか?
わたし達は1年を365日、1日を24時間という単位に区切って生活しています。
しかし、わたし達にとっての時間のリズムは正確にこの周期で繰り返されているわけではなく、地球と他天体(特に太陽)との位置関係によって成立しています。
たとえば地球が太陽の周りを一周する公転周期は、実際には365日より少し長い、365.24日です。
このため、わたし達は4年に1度、2月に1日を追加します。
実際には4年に1度という周期ではさらに細かいズレが生じるため、うるう年は100で割れる年には導入しない、さらに400で割れる年には導入するという細かい法則があります。
(100年周期の世紀の変わり目である2000年は、本来うるう年は必要ない年ですが、400で割れるため例年通りうるう年が導入されています)
このようにうるう年は非常に規則的に導入されており、その法則は多くの人が理解しているはずです。
一方、「うるう秒」はどういう規則で導入されているか理解できているでしょうか?
「うるう年」と「うるう秒」は名前が似ているため、うるう年では補いきれない細かいズレをうるう秒で補正していると勘違いしている人も多いかもしれません。
しかし、この両者は補正している対象が全く異なります。
うるう年が地球の公転周期の補正であるのに対して、うるう秒は地球の自転周期、つまりは1日の長さを補正しているのです。
原子時計という非常に正確な時計が登場したことで、1972年以降、人類はこの精密な時計を基準とした協定世界時(UTC)という標準の時刻を利用するようになりました。
しかし、この時刻は天体観測によって定められる時間(UT1)と徐々にズレが生じてきます。
そしてその差が0.9秒を上回ることになった際、協定世界時に1秒を挿入して補正しているのです。
では、どういうタイミングでこの時間はズレるのでしょうか?
実のところ、ここには明確な規則が存在していません。
うるう秒は協定世界時が実施された1972年以降、計27回導入されていますが、基準はあくまでUTCとUT1の差が0.9秒以下になるよう補正するというものであり、うるう年のような規則的な補正をしているわけではないのです。
これは地球の自転が、公転周期のように規則的に変化しているのではなく、非常にムラのある速度で回転していることを意味しています。
なぜ1日の長さは変化するのか?
その原因の一つは、月の潮汐力であるとされています。
ただ、月の潮汐力による地球の自転速度の低下は非常に弱いもので、100年間で1.8ミリ秒(1000分の1秒)程度だとされています。
これは5万年でやっと1秒ズレるという計算です。
そのため、この影響だけではうるう秒が必要になるほど1日の時間がズレる説明にはなりません。
さらに、地球の自転速度は単純に遅くなっているだけではないことも明らかになっています。
1990年代の調査では、地球の1日は過去100年間で約2ミリ秒長くなっていることが(自転が遅くなている)ことが示されましたが、2003年に行われた調査では、1日の長さは24時間より1ミリ秒長いという結果が出たのです。
これは1990年より2003年の方が地球の自転は速くなってしまったということを意味しています。
つまり、地球の自転速度はまったく安定していないのです。