障害物があっても機能する音波浮遊技術
音波をつかった物体浮遊技術は、以前から研究されてきました。
これは波の干渉を利用して物体を浮かせる技術です。
そのためには、大量に並べた超音波発振器をリアルタイムで制御して、適切な音場を生成しなければいけません。
そして私たちの身の回りの空間では、それが難しい場合がほとんどです。
障害物が何もない空間であれば、音場の制御は比較的容易ですが、音波を反射する障害物が近くにあると、途端に物体を浮遊させることが難しくなるのです。
しかし最近では、世界中の科学者たちによって、徐々にこの課題が克服されつつあります。
例えば、東京都立大の研究チームは、2021年に発表した論文で、音波を反射しやすい台の上で物体を浮遊させたと報告しました。
そして今回、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の平山氏ら研究チームは、もっと複雑な反射や散乱に対応できる音波浮遊技術を開発したと報告しています。
彼らは、小型の超音波発振器256個をデバイスの上下に配置。
これにより、デバイス内の空間では音場がリアルタイムで調整され、浮遊物体を絶えず動かせるようになりました。
しかも、壁や観葉植物のような「音波を散乱させる障害物」が複数あっても、コンピュータアルゴリズムが即座に計算し、音波の形状を調整。浮遊状態を維持できるというのです。
このアルゴリズムの性能は非常に高く、揺れ動く水面上でも物体を浮遊・移動させることができるのだとか。
また浮遊する物体を指や棒で自由に操作することも可能なようです。
さらにチームは、この技術とプロジェクターを組み合わせることで、新たな映像表現をつくりだしています。