「寄生体」から「共生体」への進化の途中か?
興味深いことにチームのゲノム解読から、D. フォリクロルムの細胞数は「幼虫と成虫の中間時期」に最も多くなることが判明しました。
普通、生物は成長するごとに細胞数を増やしますが、彼らは中間期を境に、大人になるにつれて細胞数を減らしていたのです。
チームによると、これは「D. フォリクロルムがヒトに内部共生するための進化の一段階である」と指摘します。
しかしダニが内部共生することで、人体に害はないのでしょうか?
これまでの研究で、この種のダニには「肛門」がないため、一生(約2週間)を通じてフンを体内に溜め込み、死ぬときにそれを一挙に放出して、皮膚に炎症を起こしている、と指摘されていました。
ところが今回、D. フォリクロルムを顕微鏡でつぶさに調べたところ、初めて「肛門」が見つかったのです。
つまり、D. フォリクロルムは、肛門を通してちょっとずつ排便することで、従来考えられていたよりは、私たちの皮膚上に害のないように振る舞っていると見られます。
もしかしたらこれもD. フォリクロルムがヒトとの内部共生の前準備として進化させた比較的最近の生態なのかもしれません。
顔にダニが住んでいることを想像するだけで、不気味なことは確かです。
しかし特にイタズラもしませんし、彼らを顔の上で絶滅から守ってあげていると考えれば、そんなに悪い気もしないのではないでしょうか…?
※この記事は2022年6月に掲載したものを再編集してお送りしています。