栄養レベルの高さを示す「窒素15」の含有量を調査
本研究では、古代の海洋食物網について理解を深めるべく、化石に含まれる窒素同位体を測定しました。
これまでの知見により、ある生物が窒素15をより多く持つほど、栄養レベルが高くなることが知られています。
食物連鎖の最下層に位置する植物や藻類の中には、空気中や水中の窒素を組織内に取り込むものがいます。
次に、それらを食べた小生物の体内に窒素が蓄積し、またそれを食べた大型の生物に蓄積していきます。
重要なのは、窒素全体の99%を占める窒素14が、窒素15よりも軽く、優先的に(ときに尿として)体外に排出されることです。
すると、食物連鎖の上位に近づくほど、体内に蓄積する窒素15の割合が多くなるのです。
研究チームは今回、メガロドンを含む「オトドゥス科(Otodontidae)」のサメの栄養レベルを調べるため、歯の化石を用いました。
サメの歯は、最も豊富に見つかる化石の代表であり、保存状態も良いので、エナメル質に含まれる窒素を調べるには最適です。
チームは、オトドゥス科を含む5000個以上のサメの歯と、2万個以上の海洋生物の歯や骨について、窒素14/窒素15の同位体比を測定。
その結果、メガロドンおよび、その祖先の一部は、絶滅種や現生種を含む、どの海洋生物よりも高い栄養段階を占めていたことが明らかになりました。
実際、彼らの栄養レベルは驚くほど高く、下位の捕食者や、さらにそれを捕食する捕食者など、手当たり次第に何でも食べていたに違いない、と研究チームは話します。
研究主任のエマ・カスト(Emma Kast)氏は「海洋の食物網はとても複雑で、陸上における”草-シカ-オオカミ”のような食物連鎖よりも長くなる傾向がある」と指摘します。
というのも、スタートがプランクトンのような微小生物から始まり、頂点のメガロドンに至るまでに多種多様な生物が絡んでいるからです。
こうした、メガロドンの栄養レベルの高さが、体長15mにまで達する巨大化を可能にした最大の要因なのかもしれません。
研究主任の一人でありダニー・シグマン(Danny Sigman)氏は「もしメガロドンが現代の海に存在していたら、私たちと海洋環境との関わり方は徹底的に変わっていたでしょう」と述べています。
現代の海洋に人間を積極的に襲うような危険な生物はいませんが、もしメガロドンが生きていたらそうはいかなかったかもしれません。
私たちが夏に海で遊べるのは、メガロドンがいなくなったおかげかもしれません。