「T細胞」学校の劣等生の運命は自殺か左遷
今回の研究によって、胸腺がT細胞の学校として機能できるのは、内部に体の各部位を真似た模倣細胞が存在しているからだと示されました。
うまれたばかりの未熟なT細胞は胸腺に運ばれると、模倣細胞との接触を繰り返し、攻撃してはいけない自分の細胞(味方)の特徴を学んでいきます。
また模倣は単に外観だけでなく模倣対象となる組織に固有の転写因子によって引き起こされていることも判明します。
(※以前は「AIRE」と呼ばれるタンパク質がランダムに結合し、ランダムな変身を起こすと考えられていました)
さらに追加の調査で、教育に失敗して自分の体を攻撃してしまいかねない「落ちこぼれ」T細胞の運命を追跡したところ、自己破壊命令を受けて自殺する場合と、免疫システムの攻撃を抑制するタイプのT細胞に転用される場合があることが判明しました。
免疫システムの根幹となる戦うT細胞となるには、敵味方の識別能力が必須であるため、落ちこぼれには厳しい「自殺命令」や「配置転換」の措置がとられるようです。
研究者たちは今後、T細胞の教育にある分子メカニズムをさらに深く調査し、模倣細胞によるT細胞の教育の成否が、自己免疫疾患に与える影響を調べていくとのこと。
T細胞の教育が常に完璧なものならば、自己免疫疾患はもっと珍しい病気になるはずだからです。
研究成果が医学的に応用できれば、現在ではほぼ対処療法しか取れないリュウマチなどの厄介な自己免疫疾患の根本的な治療が実現するかもしれません。