ネアンデルタール人との遺伝的交配は5〜6万年前に起こった
ネアンデルタール人は、約40万年前に誕生した旧人類であり、約4万年前に絶滅したとされています。
一方の現生人類(ホモ・サピエンス)は、約20〜30万年前に出現し、今日に至るまで大いに繁栄してきました。
これまでの研究によると、両者の遺伝的交配は、5〜6万年前に複数回起こったとされています。
それ以前の約50万年間、2つのグループは互いにほぼ独立して進化してきました。
ネアンデルタール人はユーラシア大陸で、現生人類はアフリカ大陸で。
その間、両者は、それぞれ異なる進化的圧力を受け、それぞれの環境に有利な遺伝子変異が蓄積されました。
ところが、現生人類がアフリカを脱出した5〜6万年前に、ネアンデルタール人と出会い、現代人の遺伝子プールに彼らのDNAが入り込んだのです。
その遺伝子は、DNAシークエンシング(遺伝子配列の決定)の進歩にともない、世界各地の現代人の間で見つかり始めています。
ネアンデルタール人からの遺伝子流入は、神経系や皮膚の色素沈着など、いくつかの形質に影響を与えていることがわかっています。
しかし、ネアンデルタール人の遺伝的流入が人間(ホモ・サピエンス)向けの薬に対してどのような影響を持っているかは、あまり解明されていません。
本研究は、その臨床的影響の理解を深めるものです。
研究チームは今回、あるDNA領域にあらわれる遺伝子多型(バリエーション)に基づき、ネアンデルタール人のDNAの臨床的影響を調査しました。
「遺伝子多型」とは何かを説明しますと、まず、私たちの細胞には、1つにつき計46本の染色体が含まれています。
両親から1本ずつ受け継いだ染色体が、2本でワンペアとなり、全部で23対あります。そのうちのワンペア(2本)は、男性か女性かを決める性染色体です。
これら染色体は、糸状になったDNAが折りたたまれてできており、ここに数十億の塩基対が収まっています。
(※ 塩基には、A:アデニン、T:チミン、G:グアニン、C:シトシンの4種類がある。これらの塩基配列を、遺伝情報に基づいて、アミノ酸配列に変えることで、特定のタンパク質が合成される)
その大部分には個人差がなく、種内で共通していますが、DNAレベルで見るとバリエーション(DNAを構成する塩基配列の個体差)が生じることがあります。
これが「遺伝子多型」です。
チームは、医薬品の分解に関わる、ある酵素の遺伝子多型に注目しました。