乳糖分解能力は飢饉や病気を生き残るためにわずか数千年で獲得されたと判明!
乳糖分解能力は飢饉や病気を生き残るためにわずか数千年で獲得されたと判明! / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
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人間が牛乳でお腹を壊さなくなったのはわずか数千年で獲得された進化だった (3/3)

2022.07.30 18:00:00 Saturday

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極限状態ではミルクで死亡率が上昇する

乳糖耐性がないままカロリーを補うためにミルクをガブ飲みすると下痢を起こしてしまい、極度の栄養出張時には致命的になります
乳糖耐性がないままカロリーを補うためにミルクをガブ飲みすると下痢を起こしてしまい、極度の栄養出張時には致命的になります / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

今回の研究により、乳糖分解能力を与える遺伝子が乳製品の利用に付随した「穏やかな進化」によって獲得されたものではなく、飢饉や感染症の蔓延といった厳しい状況で大量の犠牲者を出す「厳しい進化」によって、獲得されていったことが示されました。

農作物が全滅する飢饉においては、家畜によって植物から変換されるミルクを大量に飲んでカロリーを補う必要があるため、乳糖分解能力は必須となります。

また乳糖分解能力がない場合、腸内に乳糖が高濃度に蓄積して結腸に水を引き込むことが知られており、下痢を伴う感染症を悪化させ、脱水症状を経て命が脅かされます。

ミルクを発酵させることで乳糖を減少させる効果が見込めますが、先史時代の人々の場合、そのまま飲んでいた可能性が高く、乳糖による悪影響はより深刻だったと考えられます。

そのため研究者たちは、飢饉や感染症の蔓延する状態ではミルクを摂取することが死亡率の上昇につながり、乳糖分解能力を与える遺伝子を持つ人だけが生き残る厳しい淘汰を発生させたと結論しています。

また追加の調査で、現在の人々の乳糖分解能力の有無と健康状態を比較したところ、目立った違いがないことが判明しました。

このことから研究者たちは、通常の健康状態では乳製品の摂取が健康状態に影響を与えず、自然淘汰を起こす要因にはなり得ないことを示します。

ある種が特定の形質を急速に獲得する場合、その陰には多くの犠牲がつきものです。

もし今度ミルクを飲んでみることがあったら、私たちの先祖が支払った犠牲に思いをはせてみるのもいいかもしれません。

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人間が牛乳でお腹を壊さなくなったのはわずか数千年で獲得された進化だった (3/3)のコメント

ゲスト

乳糖不耐性の人はA2牛乳を飲めばいいよ。
乳糖不耐性によるお腹ゴロゴロはA1遺伝子(北欧の牛の多くがコレ)によるものだから、A1遺伝子ではない牛の乳(A2のみ)を選んで絞ったのがA2牛乳。
最近はスーパーでも比較的見かけるようになったの。
加工乳じゃなくてちゃんと牛乳。

鈴木

古代の酪とか酥とか醍醐といった乳製品が時代を下ると定着しなかったのは、需要と供給のどちらに課題があったのでしょうか。
アニメ「アルプスの少女ハイジ」で、羊飼いのペーターが生乳を飲む場面がありますが、乳糖耐性があるとして、ホモジナイズされていない脂肪分は胃もたれしないのかしら?

うんちマン

これがボトルネック効果ってやつなのかな?(違ったらごめん)
牛乳を飲んだら腹下すかどうかってことからも先祖が歩んだ歴史を推測することができるってのは歴史のロマンだねぇ飢餓起こした本人からしたらそんな場合じゃないんだろうけども

ゲスト

もともと母乳なら分解できるのにそんなかかんの

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