学習回路だけでは上達は起こらない「学習+学習=0」
今回の研究により、学習と記憶が異なる脳回路によって形成されていることが示されました。
課題の上達を成し遂げるにはまず意図的な試行錯誤(学習努力)によって「学習シナプス(学習回路)」を形成し、その後に形成される別の「記憶シナプス(記憶回路)」に内容を引き継がなければなりません。
「学習+学習+学習……」と学習努力だけを積み重ねても「記憶シナプス(記憶回路)」の働きがなければ、上達は起こり得ないからです。
一方で「記憶シナプス(記憶回路)」に接続されている視床は無意識的な自動行動に関連した脳領域であり、努力が必要だった課題を無意識的・自動的に実行できるようにしてくれます。
人間で例えるならば、初めは箸の練習に神経を使う必要がありますが、上達が起こるにつれて運動が自動化され、そのうち会話したりテレビをみながらでも無意識的に箸を扱えるようになる過程が当てはまるでしょう。
研究者たちは、最終的に必要とされる「記憶シナプス(記憶回路)」の形成を「学習シナプス(学習回路)」が助けている可能性があると述べています。
脳は意識的な試行錯誤が必要な「学習」と自動化された動きを実現する「記憶」に回路をわけることで、より効率的な上達を実現していると考えられます。
また研究者たちは同様の仕組みは人間にも存在しており、学習と記憶をつなぐメカニズムが解明できれば、学習障害や認知機能障害などの原因究明にも役立つと述べています。
いくら学習を繰り返しても成果が上がらないという人の場合、学習回路から記憶回路への引き継ぎに障害が起きている可能性があり、今回の研究はそうした学習障害の治療や改善に役立つ可能性があります。