サイズは小さいけど、アーマーはすでに立派だった
UMAIの研究チームは、南米のアルゼンチンとチリにまたがるパタゴニア北部のリオネグロ州で、過去10年にわたり継続的な発掘作業を行ってきました。
そしてこのほど、回収された化石の中から、科学的に知られていない”未知の鎧竜”の部分骨格が特定されたのです。
この骨格の持ち主は、大人になる前の、生殖能力とサイズ以外は成体と同じ形態に達した「亜成体」と判明しています。
生息年代は、約9700万〜9400万年前の白亜紀後期にあたり、全長は尻尾を含めて約1.5メートル未満で、体重は大きめのイエネコと同じ4.5~7キログラム程度と推定されました。
亜成体でこのサイズであれば、完全に成熟しても、それほど大きくはならなかったでしょう。
また、この恐竜は二足歩行であり、他の四足歩行の鎧竜たちに比べると、よりスピーディーに移動できたと思われます。
保存状態の良い歯は、先端がギザギザになっており、堅く木質化した植物も難なく食べることができたようです。
それから、いとこの鎧竜たちと同様に、首から背中、尻尾にいたるまで、骨でできた楕円形の装甲が列をなし、高い防御力を備えていたことがわかります。
小さい割には、すでにタフネスも抜群だったようです。
この点を踏まえて、新種の学名は「ジャカピル・カニウクラ(Jakapil kaniukura)」と命名されました。
「ジャカピル(Jakapil)」は、アルゼンチンの先住民族の言葉で「盾を持つ者」を意味し、「カニウクラ(Kaniukura)」は「石のカブト」を意味する言葉に由来します。
ジャカピル・カニウクラは、他の鎧をまとった恐竜たちと共に「装盾類(Thyreophora)」というグループに属します。
(装盾類の下位分類としては、剣竜類のステゴサウルスや、鎧竜類のアンキロサウルスがいる)
装盾類の化石は、主に北米とヨーロッパのジュラ紀の岩石から見つかっているため、南米の白亜紀の地層から発見されたのは大変な驚きでした。
北半球に生息した装盾類の多くは、ジュラ紀中期までに絶滅しています。
研究主任のファクンド・リゲッティ(Facundo Riguetti)氏は「新種の発見により、装盾類はこれまで考えられていたより、はるかに広い地理的分布を持つことがわかりました」と話します。
リゲッティ氏と研究チームは、ジャカピル・カニウクラが、これまで知られていなかった装盾類の系統を表している可能性が高いと考え、南米の鎧竜の知られざる多様性を理解する一助として、大いに注目しています。