ノブを回す指の数・うわさ話の真実と嘘・成功は才能ではなく幸運のお陰
工学賞:ノブを回すのに最適な指の数が判明
ドアノブに代表されるように、私たちの身の回りには手を使って回転させることで操作する多くの装置が存在します。
しかし、これらの回転する装置の大きさと、使われる指の数の関係については意外なことに、ほとんど調べられていませんでした。
そこで千葉工業大学の研究者たちは32人の被験者たちに対して、直径7ミリ~13センチの45種類の円柱を用意して回してもらうことにしました。
結果、円柱の直径が拡大するにつれて、使われる指が増加していくことが判明します。
具体的には、直径が10ミリ未満のつまみサイズの円柱の操作には2本の指が使われていましたが、10ミリ~11ミリになると3本目の指が使われるようになり、23ミリ~26ミリになると4本目の指が投入され、45ミリ~50ミリになると5本目全ての指が使用されるようになりました。
何気ないデータに思えますが、人間の手は操作する対象に対して無意識のうちに投入する指を調節していることを示します。
同様の無意識による指数の調整は回転動作以外にも、日常生活のさまざまな場面に存在すると考えられます。
もし将来、工業デザイナーを目指すのであれば、それらは必須の知識だと言えるでしょう。
平和賞:「うわさ」の真実と嘘を見抜く
全ての戦争が舌戦やうわさで行われるならば、世界は平和です。
現代に生きる私たちの多くは「うわさ」について懐疑的ですが、通信手段が乏しい時代にあっては、唯一の情報伝達手段であり、個人や集団同士の協力を推し進めたり維持するために使われていました。
「うわさ」の内容は肯定的・中立的・否定的といった内容によって区分されるだけでなく、それが話し手によって真実として語られているか、嘘として語られているかも重要な情報になっています。
「うわさ」の話し手が他人に情報を流すときに、情報の内容と真偽はどんな条件で変化するのでしょうか?
新たに行われた研究では「うわさ」を「ここにいない人間の情報をここにいる人間と共有するもの」と定義し、その真偽が変化する条件を調べています。
研究ではまず、ゲームを使って「うわさ」のマトとなる人間と「うわさ」の聞き手の関係性を4つに分類することからはじまりました。
1つ目は「うわさ」のマトと聞き手に相互利益があるゲーム、2つ目は「うわさ」のマトには負担になり聞き手には利益があるゲーム、3つ目は逆に「うわさ」のマトには利益があり聞き手には負担になるゲーム、そして4つ目は互いが負担になるゲームです。
結果「うわさ」の話し手は情報を流すことで「うわさ」のマトと「うわさ」の聞き手の利益や不利益を操作することが可能になり、間接的な利益を得られることが判明します。
また「うわさ」の正確さは「うわさ」のマトとなる存在との関係にも大きな影響を受けることが示されました。
たとえば親たちが身近にいる「悪ガキ」について「うわさ」を行うときには、「悪ガキ」という共通認識を維持するような情報のみが伝達され、「悪ガキ」とされた子供が良い行いをした場合でも、その情報は封鎖される傾向にありました。
一方で、親たちは縁遠い「最近みかける子供」については、バイアスをかけずにさまざまな情報を正直に伝達しあっていたのです。
人類の最も最初の情報伝達手段としての「うわさ」の仕組みを解明することは、不確かな情報が飛び交う現在においても、非常に重要となるでしょう。
経済学賞:最も才能がある人よりも最も幸運な人が成功する
欧米や日本においては、成功の秘訣は才能や努力にあると考えられています。
そのため私たちはしばしば、成功者を偉大な才能と多大な努力をしてきた、立派な人だとして崇めることがあります。
ですが凡人の100倍も資産を持つ人間でも、凡人の百倍高い知能を持っていたり凡人の100倍働いたりしたわけではありません。
にもかかわらず、世の中には信じられないような億万長者が存在します。
そのため研究者たちは、富の獲得には才能や努力といったもの以外の成分が裏で働いている可能性があると考え、現実世界を反映した数理モデルでその要因を探しました。
結果、莫大な富に結びつく隠れた要素が、ランダムに発生する幸運にあることが判明します。
研究者たちは「才能や努力が必要ないわけではない。しかし成功の尺度から計算すると、才能が豊かで努力家な人間であっても、遥かに平凡な人々に追い抜かれることがある。したがって、文化に広く浸透している素朴な実力主義は実情にあっていない」と述べています。
才能を磨いたり努力を重ねても、適切なタイミングで適切な場所にいなければ、莫大な富を得ることはできないようです。