法律文が難しい理由・アイスクリームをがん治療に利用・子アヒルのエネルギー節約・ヘラジカの衝突実験
文学賞:法律の文章が無駄に難しい理由を解明
法律の文言を目にしたことがある人ならば、その文章の煩雑さにイライラした印象を受けた人がほとんどでしょう。
なぜ法律の文章は、無駄に難しいのでしょうか?
法律の文章の多くは専門的な用語と複雑な文章構造で知られています。
これまで、法律の文章が複雑な理由としては主に「正確さ」のためだと言われてきました。
しかし新たな研究では、法律の文章を難しくせざる得ない理由は、正確さとは無関係な部分があると述べられています。
たとえば、法律には文章のなかに文章をハメ込むような表現が多用されていることが知られています。
このような文章のハメ込み表現は、さまざまな文章の理解度を低下させてしまいます。
一方で、ハメ込まれた文章を分離して2つの文章にしても、正確さを劣化させる心配はありません。
研究では、法律の文章には、意味を難解にする文章のハメ込みが、普通の文章にくらべて2倍も多いことが示されています。
また以前に行われた研究では、専門的な用語を簡単な代替語に置き換えも、特に問題なく正確な理解が保たれていることが報告されています。
そのため研究者たちは、法律の文章が難しいのは、正確さ以外の別の要因が働いているからだと結論しました。
具体的には、法律を書く立場にある人々が、簡単に表記できる内容を難しくするような選択を、暗黙のうちに行っている可能性があるとのこと。
法律の難しい文章を理解できるスキルは、特権のように働き、理解できない人から利益を搾取することを可能にします。
研究者たちは、このような意味のない難しさは弊害になるだけであり、変えていく必要があると述べています。
医学賞:がん治療の副作用をアイスクリームで減らす
がん治療などで、化学療法を受けている患者は、口腔粘膜炎と呼ばれる状態を発生しやすいことが知られています。
これは有毒な治療によって口の粘膜の上皮細胞が破壊され、細菌に感染しやすくなるなることが原因とされています。
口腔粘膜炎になると、唾液と粘液が増加し、ときに痛みを伴って食べ物を飲み込むことが不可能になってしまいます。
口腔粘膜炎を防ぐ手段として、アイスチップを用いた凍結治療であり、口腔粘膜の血管を収縮させることで、炎症をとめて毒性の強い治療薬との接触を減らすことが可能になります。
つまり、治療中に冷やすことで、細胞を保護できるのです。
そこで研究者たちは、従来の凍結療法に用いられているアイスチップを「アイスクリーム」に変えた場合にも、同じような効果があるかを確かめました。
結果、アイスクリームを用いた凍結療法を行った患者では28.95%だけが口腔粘膜炎を発症しましたが、凍結療法を受けなかった患者は59%で発症してしまいました。
研究者たちはアイスクリームが治療方法に導入できれば、小さな子供たちの苦痛を減らすこともできると述べています。
物理学賞:子アヒルたちのスリップストリーム
自転車レースなどでは、先頭の人が風を切って進むことで、後ろにいる人は風の抵抗を38%削減し、必要な出力も35%削減することが可能になります。
そこで研究者たちは、同じ現象が母アヒルの後ろを進む雛鳥にも当てはまるかを調べることにしました。
結果、母アヒルの後を進むことで抗力を大幅に減らせることが判明します。
安全工学賞:ヘラジカのダミーと車の衝突実験
スウェーデンでは5月頃になると、ヘラジカと車の衝突が1日に13件あまり発生することが知られています。
この時期は、母親のヘラジカが1歳になった子供との親子の縁を切る時期と重なっており、混乱した子供のヘラジカはしばしば、車道に迷い込むことがあります。
ヘラジカは日本の鹿に比べてかなり大きく、この時期の子供(1歳)であっても200kgに到達します。
さらに厄介なことに、車との最初の接触が足部分で起こるために、ヘラジカの巨大な体は車のボンネットの上を転がるようにして、フロントガラスに突っ込むことがありました。
そこで研究者たちは、死んだヘラジカがまだ暖かいうちに解剖して内臓や骨の位置のデータを取得することで、本物のヘラジカに近い衝突特性を持つゴム製のダミーを作り、実際に車との衝突実験を行ってみました。
結果、ダミーと衝突した車は、本物のヘラジカに衝突したときと同じような損傷を受けることが判明します。
研究者たちは他の動物にあわせたダミーを作ることで、さまざまな地域に住む大型動物との事故を再現できると述べています。