欧米の赤ちゃんは「目の色」がよく変わる⁈
日本人ではあまり見られませんが、欧米圏では、赤ちゃんの目の色が、成長につれて変わることが多々あります。
たとえば、生まれたときは薄いブルーだった目が、2〜3年後には濃いブラウンになっていることも珍しくありません。
そのため、欧米圏のご婦人方の井戸端会議では、「あの家の子は青い目で生まれてきたけど、何年かしたら変わりますよ」といった会話が普通なんだそう。
スタンフォード大学(Stanford University)の眼科医チームは、2019年に、カリフォルニア州の小児病院で生まれた148人の赤ちゃんを対象に、目の色の追跡調査をしています(Acta Ophthalmologica, 2019)。
その結果、最も多い目の色が茶色で全体の77人、次が青色で40人でした。
ところが2年後、青い目を持つ40人の赤ちゃんのうち、11人が茶色に、3人はヘーゼル(淡褐色)に、2人は緑色の目に変わっていたのです。
また、77人の茶色の目を持つ赤ちゃんでは、ほぼ全員の73人が2歳になっても、そのまま茶色の目を保っていました。
つまり、青色の目の方が茶色の目よりも、生後の数年で変色する可能性が高かったのです。
これは、なぜでしょうか?
目の色は「メラニンの量」で決まる
その手がかりの一つは、赤ちゃんの目の色が変わるとき、明るくなるのではなく、暗くなる傾向が強いことです。
先の研究でも、最も多い変化は、青から茶色のように色が濃く暗くなることでした。
逆に、茶色から青や緑色に変わることは、ほぼありません。
このように目の色が濃くなる理由は、成長につれて虹彩(瞳孔の周りの部分)にメラニン色素が沈着するからです。
メラニンは、目や皮膚、髪の毛などに存在し、紫外線からダメージを受けるのを防ぐ重要な役割があります。
日に焼けて、皮膚が黒くなるのは、メラニンが大量に生成されるためです。
よって、目の色は虹彩に沈着する「メラニンの量」で決まり、その量が多いと、ヘーゼル(淡褐色)や濃いブラウンに変わります。
反対に、メラニンが少ない虹彩では、光が虹彩の奥まで通り抜け、コラーゲンの繊維によって散乱されるため、青い色に見えます。
ちなみに、欧米圏でサングラスをかけている人をよく見かけるのは、虹彩の色素が薄い青や緑色の目を持つ人が多いからです。
彼・彼女らは、茶色の目を持つ人々に比べて、元から光に敏感なのです。
オッドアイは先天的にも、後天的にも現れる
以上のことから、赤ちゃんの目の色が成長とともに変わるのは、光から目を保護するためにメラニン量を増やしているからだとわかります。
(これは毛髪も同じで、明るい金髪の子が大きくなるにつれ、濃いブラウンになることがよくある。日本でもハーフの子どもに見られる)
その一方で、目の色が変わる子もいれば、色が変わらない子もいる理由については、まだ完全に解明されていません。
しかし、研究者の多くは「遺伝と環境の相互作用が、その理由の大部分を占めていると見て間違いない」と指摘します。
そして、この遺伝による左右の目のメラニン量の違いが、先天的なオッドアイを生む原因なのです。
先天的なオッドアイはきわめて稀な症例ですが、メラニンの量が違うだけで、特に視力が悪いとか、見え方に異常があることはありません。
また、オッドアイは、感染症やケガ、強度の日焼けなどにより、後天的に現れることもあります。
当のデヴィッド・ボウイは、幼少期のケンカが原因で、左目の瞳孔が拡張し、ブルーの右目と異なるヘーゼル色に見えるようになったという。
ですから、ボウイの場合は、虹彩のメラニン量が変わったわけではありません。
しかし、後天的なオッドアイも、視力に問題があるわけではないそうです。
オッドアイや目の変色に関する研究はデータが限られており、ほとんどアメリカでしか調査がなされていません。
今後、より多岐にわたる地域や人種を対象に調査することで、オッドアイへの理解も深まるでしょう。
オッドアイなれたらいいな