シャチによる「ホオジロザメ殺し」の直接撮影に初成功!
今回、シャチによるサメ殺しが撮影できたのは、非常に幸運な出来事でした。
今年5月16日の午後14時頃、趣味でドローン空撮をしていた写真家のクリスチャン・ストップフォース(Christiaan Stopforth)氏が、西ケープ州のモッセルベイ近海で、数頭のシャチの一団を偶然に発見したのです。
その動向が気になったストップフォース氏は、そのままシャチの一団を追跡することに。
すると、そのうちの2頭が沿岸部の河口(ホオジロザメの活動的なスポットとして知られる)に向かって泳ぎ始め、さらに、別の2頭がそれと反対方向に分かれ、まるで見張りをするかのように接近しながら泳ぎ始めたのです。
それから約7秒後、5頭目のシャチが見張りをしていた2頭の間の水中から現れました。
そこには、シャチの鼻先で突き上げられるような形で、体長3メートルほどのホオジロザメの姿があったのです。
サメはシャチの一団に囲まれて逃げ場を失い、体当たりで横倒しにされ、胸びれ下の腹部あたりを噛みつかれ、鮮血が海中に噴き出しました。
上の画像は、まさにその瞬間を捉えたものです。
シャチたちは、サメの死骸を思い思いに食い漁って、その場を後にしています。
映像を見たローズ大学の研究チームは、シャチの一団の中に、背びれが右に曲がった「スターボード」を発見しました。
スターボードは、2015年頃、相方のポートと共に南アフリカの海域にやって来て、2017年頃から、この”殺し屋コンビ”によるホオジロザメの惨殺が顕著になりました。
本格的な調査が始まった2017年から、およそ5年半で、少なくとも8頭のホオジロザメが2頭により殺されたことが確認されています。
ちなみに、今回の狩りでは、相方のポートの姿は見られませんでした。
今は別々で活動しているのでしょうか?
映像には、スターボードが、海面に浮いたサメの肝臓を食べる様子が映されています。
サメの肝臓は脂肪が豊富であり、シャチにとっては一番狙い目の部分です。
ローズ大学の海洋生物学者であるアリソン・タウナー(Alison Towner)氏は「シャチによるホオジロザメの狩猟行動は、これまで詳しく観察されたことがなく、ましてや上空からの撮影に成功したことは一度もありませんでした」と話します。
さらに、ドローン空撮と同日に行われたヘリコプターでの撮影では、他に少なくとも2頭のホオジロザメがシャチによって殺されたことが明らかになりました。
加えて、シャチの襲撃後、生き残ったサメは数日〜数週間にわたり、同海域から姿を消すことがわかっています。
今回の事後調査でも、およそ10頭のサメが同海域を去るのが目視され、襲撃後の数週間は、ドローンで確認できるサメの数が減っていました。
南アフリカ沿岸といえば、かつてはホオジロザメの楽園として有名でしたが、殺し屋コンビの襲来以後、その状況がガラリと変わり始めています。
今回のように、シャチによる狩猟が目撃されるうちは、まだサメが存在している証拠ですが、シャチすら見られなくなったとき、南アフリカのサメが全滅したことを意味するのかもしれません。
狩りの実際の映像はこちらから閲覧できます。