レーザーで脳細胞をワイヤレス充電すると「短期記憶が25%増加」すると判明!
短期記憶は情報を頭の中に数秒から数十秒にわたって積極的に保存する能力であり、多くの認知機能に重要な役割を果たしています。
また短期記憶は知能の高さをはじめ幅広い認知能力とも相関しており、短期記憶の増強が脳機能を強化する魅力的な手段になりうると考えられています。
しかし記憶は脳細胞の活動に依存しており、増強させるには脳細胞そのものに対して何らかの働きかけを行う必要があります。
その代表的な方法が、細胞内にある「ミトコンドリアの活性化」です。
ミトコンドリアはいまから20億年前、私たちの先祖が細胞内部に取り込んだ共生生物の慣れの果てであり、現在では細胞にエネルギーを供給する「発電所」としての機能に特化しています。
そのため、もし何らかの方法で脳細胞内のミトコンドリアのエネルギー生産を補助してあげることができれば、エネルギー生産が加速し、脳細胞を活性化させることにもつながります。
そしてミトコンドリアを活性化させる方法として近年注目されているのが近赤外線レーザーを用いた手法です。
レーザーでミトコンドリアを活性化させるというと無茶な話に聞こえるかもしれません。
しかしミトコンドリアには波長が650nm~1000nm(赤色から近赤外線)の光を吸収する性質があることが知られています。
また光はエネルギーを運ぶ媒体としての性質があるため、ミトコンドリアのエネルギー生産にかかわる生体分子に上手く光を吸収させることがれきれば、ミトコンドリアのエネルギー生産を加速させることも可能になります。
実際以前に行われた研究では、市販の赤色LEDを使って目に赤色の光を3分ほどあてることで、網膜細胞のミトコンドリアに対してワイヤレス充電のようにエネルギーを供給し、視力を回復させられることが示されています。
(注意:医師の指示なしに安易に目に強い光をあててはいけません)
そこで今回、バーミンガム大学の研究者たちは人間の脳細胞に近赤外線を照射することで、人間の脳機能を改善できるかを確かめることにしました。
調査にあたっては90人の被験者が集められ、頭の外側から約6分間にわたりさまざまな波長の近赤外線レーザーが、いくつかの脳領域に向けて照射され、前後で短期記憶に差があるかが調べられました。
結果、右脳の前頭全皮質に対して1064nmの近赤外線レーザーを照射した場合、単位記憶が最大で25%増加したことが判明します。
この結果は、人間の脳細胞には光エネルギーを吸収して機能を活性化できることを示します。
研究者たちは、照射された近赤外線レーザーがミトコンドリア内のエネルギー生産にかかわる生体分子「シトクロムcオキシターゼ:CCO」に吸収されたことでミトコンドリアのエネルギー生産が加速され、脳細胞が活性化し、その余波で短期記憶が改善した可能性があると述べています。
(※シトクロムcオキシターゼではミトコンドリアが発電した電力がATPという高エネルギー化学物質に変換する機能があります)
体に負担のないレーザー光線によって短期記憶を改善できるようになれば、短期記憶に連動した脳機能も改善し、AHDHや統合失調症な、アルツハイマー病などさまざまな脳機能障害を持つ人々を助けられるようになるでしょう。
(注意:医師の指示なしに安易にレーザーを体にあててはいけません)