一般人が思う「充実した人生」に必要なものとは?
本研究では、「充実した人生」に対する一般的な考えを明らかにすべく、ドイツ語圏に在住の747名に参加者として協力してもらいました。
参加者の年齢は18歳〜93歳と幅広く、うち80%が女性、36%が独身(未婚)、55%が子ども有りとなっています。
研究チームはまず、量的には測れない質的アプローチとして、参加者に自由形式の質問を行いました。
具体的には、「あなたにとって充実した人生とは何か?」という質問に自由に答えてもらっています。
続いて、より包括的な理解のために、分かりやすいデータとして収集できる量的アプローチを行いました。
たとえば、生活の質、個々人の性格や行動特性、経済状況や周囲の人のサポートがあるか、充実度に寄与する役割や活動(職業・友人関係・ボランティア活動・旅行の頻度)、子ども時代を含む過去および現在の人生に対する満足度の評価などです。
以上のデータをまとめて分析した結果、参加者が「充実した人生」のキーポイントとして最も多く言及していたのは、認知的評価(40%)でした。
認知的評価とは、自覚している自分の人生の主観的な評価と言えるでしょう。
たとえば、参加者が挙げていたのは
・人生に目標や目的があった
・大事な目標を達成できた
・子孫に遺産を残せた
・自分の成長が感じられた
・人生の節目で良い判断ができた
・自分の価値観や信念に従って生活できた
・才能と資源を有意義に活用できた
などです。
また、認知的評価ほどの言及はなかったものの、感情的評価(10%)も「充実した人生」に大きく寄与していると見られます。
参加者が挙げたのは、
・人生において感謝の気持ちを持てた
・自分自身と調和し、平穏な心を保つことができた
・人生の中でポジティブな感情(誇り、喜び、平和)を経験できた
・自分の人生に満足しており、大きな後悔がない
などでした。
それから、参加者が人生に充実感や満足感を得る上で重要だと考える、以下のキータームが見つかっています。
・人間関係:友人や家族と充実した時間を過ごし、コミュニティの中で他者と感情や経験を共有できた
・職業:自分が満足し納得できる職業に就いている
・レクリエーション:趣味や音楽、エクササイズなど小さな楽しみが充実している
・学び:新しい人との出会いや新たな分野・視点に触れることができた
・パートナー:恋人や夫婦など愛のあるパートナーシップを築けた
・子育て:子どもを立派に育てることができた
・ボランティア:市民活動など他者の大きな目標のために奉仕した
加えて、個々人の性格や行動特性の項目では「勇気や謙虚さ、粘り強さ、好奇心、責任感、自発性、前向きな姿勢」が、人生の充実度や満足度を高める先行条件として重要であったようです。
そして以上の結果は、参加者の年齢と性別に関わらず、「充実した人生」のキーポイントとして共通していました。
本研究に参加した匿名の男性(24歳)は「自分が年をとって過去を振り返ることを想像したときに、人生において様々な失敗があったにせよ、全体としては満足のいく過ごし方だったという実感を得たい」と述べています。
さて、皆さんはどんな人生を充実したものと考えるでしょうか?
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