化石コレクションから状態のよい標本を再発見!
トゥゾイアは、今日の中国やオーストラリア、チェコ、カナダで何百もの化石が見つかっており、かつては世界中の海に分布していたことが分かっています。
しかし部分的な化石が見つかっている一方で、軟部組織(眼や脚、扇状に広がった尾部、甲羅を含む)は、ほとんど無傷の状態では見つかっていないのです。
トロント大の進化生物学者で研究主任のアレハンドロ・イズキエルド・ロペス(Alejandro Izquierdo López)氏は「トゥゾイアの甲羅は貝の硬い殻と比べると柔軟で、無傷のまま保存された標本はほぼ皆無」と話します。
それゆえ、存在は100年以上前から知られていたのに、全体像が浮かび上がってこなかったのです。
そこでロペス氏と研究チームは、ROMの無脊椎動物・古生物コレクションを訪ね、トゥゾイアの化石標本を隈なく調査することにしました。
ROMには現在、400個以上のトゥゾイアの化石断片が保管されています。
その全てを調査した結果、チームは軟部組織が保存されている化石を11例見つけることに成功しました。
これらの化石標本は、カンブリア紀の海棲生物を大量に保存していることで知られる「バージェス頁岩(けつがん)」から見つかったものです。
バージェス頁岩は、1909年にカナダ最西部のブリティッシュ・コロンビア州にあるバージェス山にて発見され、約5億500万年前の化石を多産する地層として知られます。
ロペス氏は「バージェス頁岩は、かつて海底にあった泥の層が生物の軟部組織まで封じ込めたため、保存状態が非常に良い」と説明します。
バージェス頁岩からは、アノマロカリスやオパビニア、ハルキゲニアなどの有名な古生物が発見されています。
そしてチームは、コレクションの中から再発見した11例の化石を解剖学的に分析することでトゥゾイアの全体像を復元。
こうして蘇ったトゥゾイアの姿がこちらです。
ボディを覆う丸く平べったい甲羅が特徴的で、チームは「タコスのようだ」と表現しています。
確かに、具材を挟んだタコスをひっくり返したような見た目をしていますね。
甲羅のサイズは約8ミリ〜18センチと幅がありました。
頭部や尾部を含めると、最大個体の全長は23センチほどに達しています。
横から見ると、こんな感じ。
甲羅の側面にはトゲのある隆起があり、ボディの真上の中央部にもトゲが走っていました。
これらのトゲには遊泳時の安定性を助ける機能があったと予想され、また、無数に並んだ脚から海底を自由に移動することもできたでしょう。
この点から研究チームは、トゥゾイアが海底に散乱した小型生物の死骸を食べる「スカベンジャー(腐肉食生物)」であったと考えています。
今はまだ無名ですが、キャッチーで可愛らしい見た目から、アノマロカリスやオパビニアと並ぶ人気の古生物となるかもしれません。